新選組の本を読む ~誠の栞~

小説 史談 エッセイ マンガ 研究書など

 細谷正充編『誠の旗がゆく』 

アンソロジー。副題『新選組傑作選』。
14人の作家による、新選組を主題とした短編小説を収録している。
収録作品は、当ブログですでに紹介済みのため、以下のとおりまとめ記事とする。

池波正太郎「ごろんぼ佐之助」
自尊心が強く一本気な美丈夫、原田佐之助の痛快一代記。
詳細は池波正太郎「ごろんぼ佐之助」を参照。

宇能鴻一郎「豪剣ありき」
浪士組責任者である松平忠敏の目から見た、芹沢鴨の豪勇ぶりと、新選組結成の経緯を描く。
詳細は、宇能鴻一郎『斬殺集団』を参照。

長部日出雄「近藤勇の最期」
近藤勇の、甲州勝沼戦争から刑死するまでの言動と心境を、主に永倉新八の視点から描く。
詳細は、長部日出雄「近藤勇の最期」を参照。

北原亞以子「武士の妻」
近藤勇の正妻ツネが、夫をうしない、悲嘆と辛苦に耐えつつ過去を振り返る。
詳細は、北原亞以子『埋もれ火』を参照。

神坂次郎「影男」
佐久間象山の遺児・恪二郎が、新選組に入隊するも脱走する顛末と、その後の人生。
詳しくは、神坂次郎『幕末を駆ける』を参照。

子母澤寛「隊中美男五人衆」
新選組の中で特に美男子と称された楠小十郎、馬越三郎、山野八十八、佐々木愛次郎、馬詰柳太郎の5人について実録ふうに描いている。取材によって得た情報に、創作を交えたものらしい。
底本については、子母澤寛『新選組物語』を参照。

津本陽「密偵」
新選組隊士・中島登の奮戦を、油小路事件から甲州勝沼戦争にかけて描く。
詳しくは、津本陽『密偵』を参照。

東郷隆「墨染」
御陵衛士残党の阿部十郎らが、近藤勇を墨染で襲撃する経緯を描く。
詳しくは、東郷隆「墨染」を参照。

中村彰彦「巨体倒るとも」
新選組伍長・島田魁が、箱館降伏後に来し方を振り返り、明治期を生きて世を去るまで。
詳しくは、中村彰彦『新選組秘帖』を参照。

羽山信樹「総司の眸」
兄とも慕う山南敬助と、その内妻お光との間に立って、ふたりの愛憎に戸惑う沖田総司の苦悩。
詳しくは、羽山信樹『幕末刺客列伝』を参照。

火坂雅志「祇園の女」
藤堂平助が、芸妓の君香と出会い休息所に迎えるものの、その愛の重さに耐えられなくなっていく。
詳しくは、火坂雅志『新選組魔道剣』を参照。

藤本義一「夕焼けの中に消えた」
床伝の娘おみのと、新選組隊士・横倉甚五郎との、哀しい恋の結末。
詳しくは、藤本義一『壬生の女たち』を参照。

船山馨「雨夜の暗殺」
佐野七五三之助らが、新選組から御陵衛士への移籍を画策するものの、悲劇的な結末に至る。
詳しくは、船山馨『幕末の暗殺者』を参照。

三好徹「さらば新選組」
土方歳三の人物像を、近藤勇との対比によって解き明かそうとする。小説ふうの評伝というべきか。
詳しくは、三好徹『さらば新選組』を参照。

各作品の主人公は新選組隊士やその関係者だが、多様な人々を登場させた一冊となっている。
古典的名作から異色作まで、充実のラインアップ。

本書の紹介は、今まで藤本義一『壬生の女たち』の記事中に載せていた。
しかし、何かと不便なので、改めて独立記事とした次第である。ご了承いただきたい。

2003年、集英社より文庫本として刊行された。

新選組傑作選
誠の旗がゆく
(集英社文庫)
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 小松エメル『夢の燈影』 

短編小説集。タイトル読みは「ゆめのほかげ」。
新選組の実在隊士をモデルとして、彼らの生き方とその心のうちを描く全6編を収録。

「信心」
井上源三郎が、淀の激戦に倒れ、来し方をさまざまに振り返る。
試衛館の一員として浪士組に加わり上京して以来、源三郎は仲間たちの助けになろうと努力してきた。
だが、隊内の軋轢が芹沢暗殺に至って、そのようなやり方に同調できない自分は、ここにいて皆の役に立っているのかと、疑問が次第に大きくなる。ついに、退職を申し出て郷里へ帰ろうと思い立った。
ところが、源三郎が申し出るよりも早く、仲間たちは彼の意思に気づく。

井上源三郎の人柄が、人情にあつく世話好き、小言幸兵衛、努力家と描写される。
フィクションには類例のある人物造形ながら、彼も悩んで離隊を考えたことがある、という筋立ては面白い。
ちなみに作品タイトルは、信心深く、神仏の加護を頼む性分に由来している。

淀の戦場で、源三郎の最期を見届けるのは相馬肇。箱館まで戦い続け、最後の新選組隊長となった実在隊士だが、ここではちょっと世話焼きの新米隊士として描かれている。
源三郎にとっての懐かしい「故郷」とは、多摩のみならず、仲間とともに5年を過ごした京都でもあった。

「夢告げ」
蟻通勘吾(ありどおしかんご)は、従兄・七五三之進(しめのしん)の姿を夜の夢に繰り返し見る。
先に新選組に入隊し、勘吾を勧誘した七五三之進は、半年前に行方不明となっていた。隊内では「長州に通じて脱走した」という噂が広まるものの、勘吾にはとても信じられない。
周囲からは「勘吾もそのうち脱走するのでは」と不審の目で見られ、土方歳三からも冷遇されて、意欲が持てないまま隊務に服す日々が続く。
そんな時、勘吾らの班長・瀬川が何者かに斬られてしまう。代わりに配属されたのは、沖田総司だった。
さらに、親しい隊士・永橋が「七五三之進を見かけた」と勘吾に打ち明ける。

勘吾と七五三之進は、実在の隊士がモデル。
蟻通勘吾は、讃岐高松出身、天保10年生まれ、文久3年6月頃入隊。明治2年5月11日、箱館で戦死。
蟻通七五三之進は、生没年、出身地など不詳。文久3年4月頃に入隊、8月18日の政変に出動するも、その後の消息は不明。(※佐野七五三之助と名前が似ているが別人。)
勘吾と七五三之進との関係については不明だが、本作同様に血縁の可能性は考えられる。

作中、七五三之進の失踪には、ある陰謀が絡んでいた。
ただ、陰謀の主犯がそもそも何を企んでいたのか、何を知られまいとしたのか、明記がない。
この話の重点は夢と現実とのリンクにあり、陰謀を詳述する必要はないと作者は考えたのかもしれないが、もう少し具体的な説明が欲しいと感じた。

土方歳三が勘吾にそっと告げた言葉は、本書を読み進める上で覚えておきたい。
冷遇されていると思った勘吾が箱館まで戦い続けたのは、おそらくこの言葉がきっかけであろうから。

「流木」
谷三兄弟の末弟・周平は、剣技も学問も凡庸な若者。
取り柄といえば、出自が筋目正しいこと、美男子で女性にもてること、この2点のみだった。
そんな周平が、兄の三十郎・万太郎とともに新選組に加盟。近藤勇に望まれて、養子となる。
しかし、長兄や養父の期待は重荷であり、他の隊士らからは「未熟者のくせに、旧主家とのコネをちらつかせて局長に取り入った」と軽蔑されているように思えてならない。
その重圧から逃れるように女遊びを繰り返すうち、真実の恋に巡りあうが……

谷昌武が近藤勇と養子縁組をし、周平を名乗ったのは事実。ただ、いつしか縁組解消されたらしく、その経緯はよくわかっていない。本作では、縁組から解消に至る直前までが、周平の心理を主軸として描かれている。
周平に対して、三十郎は説教することもあるが、ひどく叱責するわけではない。近藤は何も言わず、温かく見守っている。しかし、周平にとってはむしろ辛いらしい。
また、永倉新八が周平に慕われている。永倉はそっけない態度でありながら、密かに若い周平を案じる。

本作には、周平の婚約者としてコウが登場する。小説には珍しいと思った。
コウも実在人物であり、大坂の医師・岩田文碩の娘。コウの姉スエは、谷万太郎の妻になっている。
「近藤勇の養女」の伝承とコウとを結びつける研究家・古賀茂作の説が発表されており、作者はそれを参考にしたのだろう。

作品タイトルは、周平が鴨川の流木を眺める場面に由来している。
行く先もわからず、沈むこともできず、ただ流されていく己の人生を、流木に重ね合わせる心がやるせない。

「寄越人」
酒井兵庫は、計算の能力を山南敬助に認められ、勘定方に抜擢された。
それに加え、ある時から寄越人(よりこしにん)の兼任を命じられる。寄越人とは、死亡した隊士の亡骸を光縁寺に運んで埋葬を依頼し、最後まで見届ける役目だった。
剣が不得意な兵庫にとって、寄越人の仕事は、斬り込みに比べればまだ楽に思えた。また、亡くなった者を見送るのも大切な役目と理解していた。
しかし、自分を引き立ててくれた山南敬助を失い、揉め事の責任を取った大谷、規律に反した2人の隊士の埋葬に立ち会い、同役で親しかった河合の死を目の当たりにした時、ついに精神的な限界を感じる。

酒井兵庫という隊士については、新選組の実態に恐れをなして脱走し、追っ手の沖田総司に斬られ、命を取り留めたものの傷の深さに驚きショック死したと、西村兼文『新撰組始末記』に記述され、それが事実と長らく考えられてきた。
ただ、実際は何らかの理由で退職したという説が近年有力のようで、本作もそちらを採用している。

「寄越人」は、光縁寺の記録史料「往詣記」に見られる語句。新選組の中で、役職名として使われていたかどうかはわからない。
「往詣記」によると、酒井兵庫が寄越人を務めたのは大谷良輔、瀬山多喜人と石川三郎の埋葬であり、山南敬助の時も関わっていた可能性があるという。本作にも、これらが反映されている。

小説に登場する酒井兵庫の人物像は、作家や作品によって区々だが、本作では純朴な性格に描かれている。
人の死に慣れることなく、納得のいかない気持ちを鬱積させていく心模様は、苦しく痛ましい。
そして、山南の死に関心を示そうとしなかった藤堂平助もまた、心のうちでは深く悔やみ悲しんでいた。
親しい者の死が辛いのは、誰しも同じなのだ。

「家路」
山崎丞は、池田屋事件に際して、反幕浪士らの会合場所を懸命に探索する。
しかし、事前に探し当てることができなかった。もしも早く情報をつかんでいたら、味方にも敵方にもあれほどの死傷者を出さずにすんだ――その後悔の念から、監察方に抜擢された丞は、任務にいっそう励む。
時に内部の非をも暴く監察方は、同志から忌み嫌われもしたが、だからといってなおざりにはできなかった。
やがて伊東甲子太郎が新選組から分離脱退した時、その動向を探るよう指令が下る。
今度こそ憂うべき事態を回避したいと努力する丞だが、その思いは再び挫かれ……

本作の山崎丞は、大坂で鍼医をしていた父を手伝い、父の死後に京へ上って新選組に加盟した。
弟の新次郎もいっしょに上京したが、新選組には加盟せず、永井尚志の家臣になったとある。
また、屯所の外に別宅を持ち、そこに妻の琴尾を住まわせている。
(※山崎丞のプロフィールは、島津隆子『新選組密偵 山崎烝』を参照のこと)

山崎丞が監察方の任務にひたすら打ち込む姿と並行して、原田左之助との関係が描かれる。
取り立てて親しいわけではないが、読めない行動をする原田を、烝はなんとなく放っておけない。
妻子の待つ家に帰ることができず、逡巡する原田に投げかけた励ましの言葉が、胸に快い。

「姿絵」
武州多摩は八王子千人同心の家に生まれ、天然理心流を学んでいた中島登
近藤勇の奉納試合を見て、その気組みに惚れ込み、日野の佐藤道場へ通うようになる。
やがて近藤らが京へ上ったのを羨ましく思っていた登は、元治元年、江戸での隊士募集に応じた。
面接した近藤は、京へ連れていく代わりに、関東探索の任務を提案する。これを引き受けた登は、広く不審人物の動静などを探り、画を交えた報告書を認めては近藤へ送り続けた。
鳥羽伏見戦後、新選組が江戸へ帰還し、登は晴れて本隊に合流する。新参同様ながら、隊への帰属意識は高い。北関東から会津へと転戦するうち、近藤の死によって目標を見失った時期もあったものの、最後まで新選組に残ると決意する。
しかし、人生の情熱すべてを賭けた新選組隊士としての日々は、箱館で終焉を迎えるのだった。
降伏後に囚われの身となりながらも、登は仲間たちが生きた証を残したいと、肖像画を描く。

中島登は、戊辰戦争後も生きのびた隊士のひとりであり、同志たちの肖像画「戦友姿絵」や手記「中島登覚書」を残したことで知られる。また、正式入隊の前は関東で探索に携わったと言われるが、具体的にどのような活動をしていたのかわかっていない。
本作は、これらに基づき、中島登の人生と「戦友姿絵」作成に至った経緯を描いている。

登と斎藤一との関係が面白い。
会津では、土方の代わりに斎藤が新選組隊長に就任し、登は隊長付き筆頭に抜擢される。
ところが、斎藤は黙って単独行動をとることが多い。おかげでさんざん苦労させられる登だが、ともに死線をくぐりぬけて戦い続けるうち、少しずつ心が通いあっていく。
次第に戦局が厳しくなり、会津に残るか仙台へ行くか迷う登に、斎藤が告げた決別の言葉が深い。

作中、登は島田魁や相馬主計の絵姿も描いている。
今日伝わっている「戦友姿絵」に彼らをモチーフとした絵は存在しないが、仮に存在したとして、それらがどうなったか想像させる筋立てが巧い。

登と長男・歌吉(登市郎)との父子関係も、心に残る。
長く生き別れとなっていた後、絆を取り戻すきっかけとなったのは、やはり登の描く絵だった。

「夢鬼」(文庫版のみ収録)
他の収録作にも登場した隊士・瀬川の主観で描かれる。
戦死した瀬川は、ふと気づけば幽霊と化していた。
誰にも見えない存在として、主立った隊士たちについていき、彼らと新選組の行く末を見届ける。
ところが、長い旅路の果てに見たものは――
「信心」「夢告げ」の番外編ともいえる掌編。

---
いずれの作品も、新選組の興亡を段取り的に追うのではなく、登場人物の心理や人間関係を活写している。
哀感がベースにあるけれども、感傷過多に陥ってはいない。
さらに、主人公たちの目から見た近藤や土方など幹部隊士の人柄も、注目どころと言える。

書名『夢の燈影』は、新選組という夢の輝きと、それを心に抱き続けた主人公たちの生き方をイメージさせる。
また、灯りが創り出す光と影の中に多彩な人間模様が浮かび上がるとも感じられ、内容に相応しいと思った。

収録作品の初出は、講談社刊『小説現代』の下記各号。
「信心」(「小言頼み」改題) …2014年6月号
「夢告げ」          …2013年5月号
「流れ木」          …2013年9月号
「寄越人」          …2013年12月号
「家路」           …2014年2月号
「姿絵」           …2014年4月号
「夢鬼」           …文庫版書き下ろし

単行本『夢の燈影』は、2014年9月、講談社より刊行された。
文庫版『夢の燈影 新選組無名録』は、2016年9月、講談社より出版。
文庫版には、書き下ろし短編「夢鬼」が追加収録されている。

作者の著書は、それまで文庫書き下ろしが主体であり、単行本は本書が初という。
新選組が登場する作品としては、他に『蘭学塾幻幽堂青春記』シリーズ(ハルキ文庫)がある。
作家としては若手と思われ、今後いっそうの活躍を期待したい。

夢の燈影
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夢の燈影
新選組無名録
(講談社文庫)
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 菊地明・伊東成郎編『新選組史料大全』 

史料集。出版されると昨秋に情報が流れてから約1年、ようやく刊行に至った。
実物は書店の店頭でざっと確認しただけなのだが、とりあえず思ったことを書いておきたい。

本書は、かつて新人物往来社から刊行された『新選組史料集』『続 新選組史料集』を底本として、その後に発見・公開された史料や、前2冊に収録されなかった史料を新たに加え、再編集したものだという。
いずれも、来歴や内容について解説がなされ、語句の註解が付いている。
本文は、史料の性質によって全4章に分かれている。

以下、目次をもとにして収録内容を紹介する。
それぞれ末尾の〈正〉は『新選組史料集』に、〈続〉は『続 新選組史料集』にも収録されていたもの。
※は、今回新たに加えられた史料について、過去の出版・収録歴を簡単に調べ、後にまとめて注記した。

第一章 (新選組隊士自身による記録)
島田魁日記〔島田魁〕             〈正〉
中島登覚書〔中島登〕             〈正〉
立川主税戦争日記〔立川主税〕         〈正〉
近藤芳助書翰〔近藤芳助〕           〈正〉
谷口四郎兵衛日記〔谷口四郎兵衛〕       〈続〉
戊辰戦争見聞略記〔石井勇次郎〕        〈続〉
函館戦記〔大野右仲〕             〈正〉
取調日記〔山崎丞〕              〈続〉
金銀出入帳                  〈正〉
秦林親日記〔秦林親〕             〈正〉
戦友姿絵〔中島登〕               ※1
杉村義衛遺稿「名前覚」〔杉村義衛〕       ※2
七ケ所手負場所顕ス〔永倉新八〕        〈正〉
新選組隊士名簿(編)             〈正〉

第二章 (新選組と接触した人物による同時代の記録
廻状留〔石坂周造〕              〈続〉
文久三年御上洛御供旅記録〔井上松五郎〕    〈続〉
旅硯九重日記〔富沢忠右衛門〕          ※3
佐藤彦五郎日記〔佐藤彦五郎〕          ※4
新選組金談一件〔藤田和三郎〕          ※5
五兵衛新田・金子家文書            〈続〉
流山関係文書
  吉野家文書                〈続〉
  小松原家文書               〈続〉
  恩田家文書                〈続〉
平田宗高従軍日録〔平田宗高〕         〈続〉
官軍記〔富田重太郎〕             〈続〉
荒井治良右衛門慶応日記〔荒井治良右衛門〕    ※6
戊辰十月賊将ト応接ノ始末〔渋谷十郎〕     〈続〉

第三章 (同時代の第三者による新選組の記録)
日本史籍協会叢書〔日本史籍協会編〕       ※7
  会津藩庁記録
  東西紀聞
  甲子雑録
  連城紀聞
  丁卯雑拾録
  中山忠能日記
  中山忠能履歴資料
  朝彦親王日記
  吉川経幹周旋記
  嵯峨実愛日記
  続再夢紀事
  採襍録
〈参考史料〉官武通紀              ※8
藤岡屋日記                   ※9
改訂肥後藩国事史料               ※10

第四章 (明治以降に刊行・発表された回顧録や編纂物)
新撰組始末記〔西村兼文〕           〈正〉
今昔備忘記(抄)〔佐藤玉陵〕         〈続〉
両雄士傳補遺〔橋本清淵編輯〕         〈続〉
柏尾の戦〔結城禮一郎〕             ※11
柏尾坂戦争記〔野田市右衛門〕         〈正〉
維新史の片鱗〔有馬純雄〕           〈続〉
御祭草紙〔内山鷹二〕             〈続〉
夢乃うわ言〔望月忠幸〕            〈続〉
松本順関係文書〔松本順〕    
  噬臍録                   ※12
  蘭疇                    ※13
  蘭疇自伝                  ※14
近藤勇の事〔鳥居華村〕            〈続〉
近藤勇の伝〔丸毛利恒〕            〈続〉
近藤勇 土方歳三〔依田学海〕         〈続〉

※1 かつて『別冊歴史読本』などに、主要部分がカラーで掲載された。
   本書ではモノクロ印刷だが、画賛が活字化され、解説が付いている。
※2 永倉新八『新撰組顛末記』にも掲載。
※3 多摩市教育委員会より「多摩市文化財調査資料」として2012年に刊行。
※4 日野市より「日野宿叢書」として2005年に刊行。
※5 『新選組日誌』文庫版(2013)に、関連箇所の多くが抜粋。
※6 原史料所有者により2002年に活字化、自費出版物として刊行された。
※7 『新選組日誌』文庫版(2013)に、関連箇所の多くが抜粋。
※8 国書刊行会(1913)、東京大学出版協会(1976)などから刊行。
※9 三一書房(1987-1995)から刊行。
※10 国書刊行会(1973)から刊行。
※11 掲載誌『旧幕府』の複製合本が原書房(1971)から刊行。
※12 松本順の回顧手記。明治期、医療業界紙に連載されたものの中断したままとなった。
    過去、書籍に収録されたことはなかったらしい。
   「蘭疇」「蘭疇自伝」より早期に成立し、これらとは異なる表現で書かれている点で貴重。
※13 日本評論社『明治文化全集』第24巻(1993)に収録。
※14 平凡社東洋文庫『松本順自伝・長与専斎自伝』(1980)に収録。 『幕末鬼骨伝』参照。

当然ながら、必ずしも史料の全文が載っているわけではない。
分量が多く、新選組と関連のない記述が多いものについては、関連のある部分だけを抜粋している。

山崎丞「取調日記」は、『続 新選組史料集』では隊士名簿の部分しか取り上げられていなかった。
しかし、本書では全部を掲載している。

「新選組隊士名簿(編)」は、『新選組史料集』では「隊士名簿に見る新選組の変遷」と題する論考だった。
また、『新選組大人名事典』下巻(2001)にも、似たような名簿史料の比較解説が載っていた。
ただし、今回は新たな史料を採り入れ、より充実した内容となっている様子。

『新選組史料集』『続 新選組史料集』に収録されていたものの、本書からは漏れた史料もある。
例えば、「伯父伊東甲子太郎武明・岳父鈴木三樹三郎忠良」「近藤勇の妻及子」「土方歳三の少年時代」「新撰組長芹沢鴨」「綾瀬村の近藤勇」など。
本書を手に入れたとしても、前2冊を手放すわけにはいかない気がする。

2014年、KADOKAWAより出版。
体裁はA5判上製・函付、全1007ページ。本文には辞書・事典用の紙が使われているかに見えたが、それでも全体の厚みが5cmはあると思う。
税別価格25,000円は、ボリューム的に妥当としても、あまり気軽に買える値段とは言えない。
前2冊を持っていないとか、大きな図書館へ度々出向くのが困難とかいった向きは、懐と相談してみてもよいのではなかろうか。

新選組史料大全
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 津本陽『密偵』 

短編小説集。副題『幕末明治剣豪綺談』。
幕末から明治期にかけ実在した人物の生涯を、様々なエピソードを交え描く8編。
そのうち、新選組に関わるのは「密偵」「弥兵衛斬り死に」「風樹」「北の狼」の4編。

「密偵」
新選組隊士・中島登の奮戦を、油小路事件から甲州勝沼戦争にかけて描く。

八王子千人隊の家に生まれた中島は、地縁から近藤勇と知りあい、近藤・土方直属の密偵となる。
命知らずの放胆な性分を生かし、高台寺月真院の床下で御陵衛士の内情を探り、町人を装って薩長軍の兵力・装備を探り、淀の白兵戦では敵兵を斬りまくった。
しかし、旧幕方の劣勢は覆うべくもなく、新選組も負け戦を強いられる。
甲州でも到底勝ち目のない情勢となり、寄せ集めの隊からは脱走者が続出する。
しかし中島は、同志のために踏み止まった。

新選組の落日を見ながら、なおも戦い続ける中島登の姿は、胸を打つ。
この作品に続く物語が、長編小説『幕末剣客伝』に描かれている。

「弥兵衛斬り死に」
富山弥兵衛が、薩摩の探索方として越後へ赴き、凄絶な最期を遂げる物語。

油小路事件の後、富山は薩摩藩へ帰参した。
長岡柏崎にいる旧幕勢力の動静を探るよう命じられ、博徒を装って潜入を試みたものの、出雲崎で身元を怪しまれ捕われてしまう。

掌編ながら、富山の「剽悍無類」の薩摩隼人ぶりがよく描かれている。
司馬遼太郎「弥兵衛奮迅」、中村彰彦「近藤勇を撃った男」と読み比べると、同じ題材ながらもそれぞれ味わいが異なり、興味深い。

「風樹」
明治初期の北海道、永倉新八が衰えぬ剣技を以て、悪質なやくざを懲らしめる痛快譚。

戊辰戦争後、松前藩に帰参を許された永倉は、藩医・杉村家に養子入りし、北海道へ渡った。
名を「杉村義衛」と改め、福山にて家庭を持ち、穏やかな日々を過ごす。
ある時、恩人の親戚が、やくざ一家と漁師達との争いに巻き込まれた。
永倉は、やくざと話をつけるべく、単身出向く。
しかしそこには、用心棒として雇われた二人の剣客が待ち受けていた。

数々の修羅場をくぐり抜けてきた剣の冴えを見せながらも、永倉の心中に漂う空虚と寂寥が切ない。

「北の狼」
杉村義衛(永倉新八)が、赴任先の樺戸集治監で、脱獄事件に巻き込まれる経緯。

明治15年、剣術師範として樺戸集治監に赴任した杉村。
囚人達の非人道的な境遇に心を痛め、看守達に「真の武士道」を叩き込もうと厳しく稽古をつける。
彼が元新選組の永倉新八と知り興味本位で挑戦した看守達は、格の違いを思い知らされた。
それでも、看守達の囚人虐待は続き、杉村が窘めても反発されるばかりだった。
そんな時、囚人5名が脱走し、杉村も追跡隊に同行することになる。
追い詰められて抵抗する脱獄囚と、看守達との戦いを見届けた彼は…

武士道が市井に埋没していった」時代に、士魂を貫く永倉の後半生は、しみじみと感慨深い。

この他の収録作品は、下記のとおり。
「喉の傷痕」 近代剣道の祖・高野佐三郎が、若き日の試合と修行によって剣の道に開眼する。
「弥太郎ざんげ」 幕末、恐喝や強盗を繰り返して捕えられた悪旗本・青木弥太郎の生涯。
「唐竹割り」 樺戸集治監で杉村義衛(永倉新八)の教えを受けた看守・花沢清文が、凶悪な脱獄囚を追跡して斃すまで。本書の中で、この主人公だけは架空の人物と思われる。
「小栗上野介遺聞」 幕府瓦解後、小栗上野介が上野国権田村にて過ごした多難の日々。

角川書店より、単行本(1989)と文庫本(1991)が出版された。
そのほか、各作品が収録されている他の書籍は、下記のとおり。

「密偵」
『誠の旗がゆく』 集英社文庫 2003

「弥兵衛斬り死に」
『最後の武士道 幕末維新傑作選』 集英社文庫 2010

「北の狼」
『北の狼 津本陽自選時代小説集』 集英社文庫 1989
『剣よ風を呼べ』 日本文芸家協会編 講談社文庫 1994
『新選組アンソロジー その虚と実に迫る 下巻』 舞字社 2004

密偵
幕末明治剣豪綺談
(角川文庫)
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 吉村昭『幕府軍艦「回天」始末』 

中編小説と短編小説、各1編を収録。双方とも、幕末の実在事件を題材とする。
表題作「幕府軍艦「回天」始末」は、奥羽越戦役から箱館戦争終結までを背景に、旧幕海軍艦隊の奮戦をドキュメンタリータッチで描く叙事もの。

最新鋭軍艦「開陽」を失った後、「回天」を旗艦とした旧幕軍は、不利な状況を打開すべく、大胆な奇襲作戦を案出。全軍の命運を賭して、宮古湾海戦を戦う。

旧幕軍の戦いぶりを、数々の史料をもとに綿密な筆致で書き綴っている。
宮古湾奇襲作戦の準備を周到に積み重ねていく様子、出撃から戦闘の経緯、箱館の総力戦など、手に汗握る迫力で一気に読ませる。

新選組では、土方歳三がもちろん活躍する。
また、中島登を隊長とする密偵隊の存在も(おそらくは創作ながら)印象的である。

箱館戦争の場面は、陸上の戦闘も過不足なく描かれていると同時に、旧幕軍の命運を象徴する「回天」の動きを中心として、海上戦が活写されている。

外の吉村作品と同様、作者の主観は極力排され、史実が客観的に述べられているが、戦争の悲惨さや人々の辛苦はむしろリアルに伝わってくる。
同じ題材を扱った小説や史伝が世にいくつもある中で、本作はベストであろう。

本作の参考文献のひとつに、コラッシュの回想録「箱館戦争生き残りの記」も挙がっている。

本書収録の短編「牛」は、文政7年(1824)のトカラ列島・宝島におけるイギリス船侵入事件を題材とする。
新選組とは関連がない。

文藝春秋社から単行本(1990)、文庫本(1993)が出版された。
表題作は、『吉村昭歴史小説集成〈2〉天狗争乱・彰義隊・幕府軍艦「回天」始末』(岩波書店/2009)にも収録されている。

幕府軍艦「回天」始末
(文春文庫)
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