中村彰彦『明治新選組』
短編小説集。鎌倉時代から明治時代まで、全6編を収録。
このうち新選組に関わるのは、表題作「明治新選組」と「近江屋に来た男」の2編。
「明治新選組」 最後の新選組隊長、相馬主計の数奇な運命を描く。
各地を転戦した末、箱館で降伏した新選組。
土方歳三亡き後、隊長を務めた相馬は、終身流刑囚として新島へ送られる。
そこで、島民の娘を暴漢から救ったのがきっかけとなり、彼女を娶って穏やかな暮らしを得た。
ところが明治5年、思いがけず赦免状が届き、愛妻を連れて東京に移り住む。
かつて近藤勇が命を落とした処刑場跡、遺体が葬られた墓所へ参り、逝った者たちの冥福を祈って心静かに暮らすことが願いだった。
しかし、やがて謎の脅迫状が届き、身辺に不審な男達が出没するようになる。
河合耆三郎や武田観柳斎の死、近藤勇の遺体埋葬、相馬主計の割腹自殺にまつわる謎に、独自の設定を交えた展開が興味深い。
相馬と妻おえつの夫婦愛が、しみじみと感動的。
生き残った人々、新時代の生き方を模索しながら過去を背負い続けた人々の人生について、いろいろと考えさせられる内容でもある。
「近江屋に来た男」 坂本龍馬を斬った見廻組・今井信郎の後半生。
暗殺事件の隠された真相が示唆され、維新後に刺客が襲撃してくるなど、息詰まる展開が続く。
事件の証言者として相馬主計、横倉甚五郎、中島登が登場する。
そのほかの収録作品は、以下のとおり。
「後鳥羽院の密使」 承久の乱を描く掌編。俊足を買われた舎人が、褒美につられて院宣を鎌倉へ運ぶ。
「斬馬剣新九郎」 松平清康(家康の祖父)に仕えた植村新九郎が、大恩ある主君に殉じようと戦う。
「一つ岩柳陰の太刀」 柳生新陰流四世・宗冬が到達した境地と、弟・烈堂との内訌。
「尾張忍び駕籠」 慶応4年の青松葉事件に巻き込まれた尾張藩士が、武士を捨てるまでの経緯。
1989年、新人物往来社より単行本が刊行。
1993年、角川文庫版が出版。
2016年、光文社文庫版が出版された。これは角川文庫版を底本として、新たに短編「五稜郭の夕日」を追加し、全7編を収録したもの。
なお昨今、電子書籍版も販売されている様子。
収録作「明治新選組」「五稜郭の夕日」は、作者の短編小説集『新選組秘帖』にも収録されている。
「五稜郭の夕日」については、『新選組秘帖』の記事をご参照いただきたい。
「明治新選組」の主人公・相馬主計(主殿)の手記「贈友談話」については、 宮地正人監修『相馬主殿回想録』の記事をご参照いただきたい。

このうち新選組に関わるのは、表題作「明治新選組」と「近江屋に来た男」の2編。
「明治新選組」 最後の新選組隊長、相馬主計の数奇な運命を描く。
各地を転戦した末、箱館で降伏した新選組。
土方歳三亡き後、隊長を務めた相馬は、終身流刑囚として新島へ送られる。
そこで、島民の娘を暴漢から救ったのがきっかけとなり、彼女を娶って穏やかな暮らしを得た。
ところが明治5年、思いがけず赦免状が届き、愛妻を連れて東京に移り住む。
かつて近藤勇が命を落とした処刑場跡、遺体が葬られた墓所へ参り、逝った者たちの冥福を祈って心静かに暮らすことが願いだった。
しかし、やがて謎の脅迫状が届き、身辺に不審な男達が出没するようになる。
河合耆三郎や武田観柳斎の死、近藤勇の遺体埋葬、相馬主計の割腹自殺にまつわる謎に、独自の設定を交えた展開が興味深い。
相馬と妻おえつの夫婦愛が、しみじみと感動的。
生き残った人々、新時代の生き方を模索しながら過去を背負い続けた人々の人生について、いろいろと考えさせられる内容でもある。
「近江屋に来た男」 坂本龍馬を斬った見廻組・今井信郎の後半生。
暗殺事件の隠された真相が示唆され、維新後に刺客が襲撃してくるなど、息詰まる展開が続く。
事件の証言者として相馬主計、横倉甚五郎、中島登が登場する。
そのほかの収録作品は、以下のとおり。
「後鳥羽院の密使」 承久の乱を描く掌編。俊足を買われた舎人が、褒美につられて院宣を鎌倉へ運ぶ。
「斬馬剣新九郎」 松平清康(家康の祖父)に仕えた植村新九郎が、大恩ある主君に殉じようと戦う。
「一つ岩柳陰の太刀」 柳生新陰流四世・宗冬が到達した境地と、弟・烈堂との内訌。
「尾張忍び駕籠」 慶応4年の青松葉事件に巻き込まれた尾張藩士が、武士を捨てるまでの経緯。
1989年、新人物往来社より単行本が刊行。
1993年、角川文庫版が出版。
2016年、光文社文庫版が出版された。これは角川文庫版を底本として、新たに短編「五稜郭の夕日」を追加し、全7編を収録したもの。
なお昨今、電子書籍版も販売されている様子。
収録作「明治新選組」「五稜郭の夕日」は、作者の短編小説集『新選組秘帖』にも収録されている。
「五稜郭の夕日」については、『新選組秘帖』の記事をご参照いただきたい。
「明治新選組」の主人公・相馬主計(主殿)の手記「贈友談話」については、 宮地正人監修『相馬主殿回想録』の記事をご参照いただきたい。
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