市居浩一『高台寺党の人びと』
高台寺党こと禁裏御陵衛士の興亡と、衛士面々の履歴について詳述した研究書。
かつて新選組の人物研究というと、近藤勇・土方歳三・沖田総司といった主流人物が多く取り上げられ、また永倉新八や斎藤一あたりにもスポットが当てられてきた。
その一方で、芹沢鴨や伊東甲子太郎といった反主流的人物については、遅れていたようだ。
後者にも研究の目が向けられるようになったのは、それほど古いことではないらしい。
著者は、伊東甲子太郎率いる御陵衛士に、早くから注目して研究を手がけた。
本書は、その長年の研究成果をまとめた労作である。
本書の内容は、「第一部 高台寺党概史」「第二部 高台寺党の人びと」の2部によって構成されている。
第一部は、伊東らの新選組入隊から残党らによる墨染狙撃事件までを、全10章にわたり解説する。
第二部は、御陵衛士に属した各人の履歴である。
取り上げられたのは、阿部十郎、新井忠雄、伊東兄弟(伊東甲子太郎と鈴木三樹三郎)、内海次郎、江田小太郎、加納道之助、清原清、佐原太郎、篠原泰之進、藤堂平助、富山弥兵衛、橋本皆助、服部三郎兵衛、毛内監物の合計15人。
著者は、新選組の側でなく御陵衛士の側に視点を置き、論を展開している。
子孫筋、各地の図書館や資料館に照会し、史料を丹念に調べ、時には聞き取り調査も行い、検討を重ねた模様。
御陵衛士の研究として質・量ともに充実しており、後続の研究書に参考として用いられることも多い。
本書は昭和52年(1977)、限定1000部の私家本として出版された。
ちなみに平成16年(2004)、著者による同趣旨の『新選組・高台寺党』が新人物往来社より刊行された。
内容は、組織の興亡と人物列伝の2部構成であること、上記15人を取り上げていることで、前著と一致する。
ただ、完全に同じというわけではない。27年の間に新しく判明した事実もあって、大幅な削除と加筆修正がなされている。
中でも伊東甲子太郎、阿部十郎、服部三郎兵衛の項目は全面改稿された。
より進んだ研究という意味では、『新選組・高台寺党』が優位であり、著者の長年の成果を知るにはこの1冊でも事足りよう。
しかし、前著にあって後著で割愛された事柄にも、興味深いものがある。例えば、藤堂平助と壬生・南部家との関わりなど、切り捨ててしまうには惜しい逸話だ。
本書『高台寺党の人びと』と『新選組・高台寺党』の両方を読むことが、理想的と思う。
余談だが、著者によると「高台寺党」は後世の人々が使い出した通称であって、本来の名称は「禁裏御陵衛士」もしくは「孝明天皇御陵衛士」「泉山御陵衛士」であるそうだ。
にもかかわらず「高台寺党」を敢えて書名に用いた理由は、「御陵衛士」より世の認知度が高いとの判断であろう。


かつて新選組の人物研究というと、近藤勇・土方歳三・沖田総司といった主流人物が多く取り上げられ、また永倉新八や斎藤一あたりにもスポットが当てられてきた。
その一方で、芹沢鴨や伊東甲子太郎といった反主流的人物については、遅れていたようだ。
後者にも研究の目が向けられるようになったのは、それほど古いことではないらしい。
著者は、伊東甲子太郎率いる御陵衛士に、早くから注目して研究を手がけた。
本書は、その長年の研究成果をまとめた労作である。
本書の内容は、「第一部 高台寺党概史」「第二部 高台寺党の人びと」の2部によって構成されている。
第一部は、伊東らの新選組入隊から残党らによる墨染狙撃事件までを、全10章にわたり解説する。
第二部は、御陵衛士に属した各人の履歴である。
取り上げられたのは、阿部十郎、新井忠雄、伊東兄弟(伊東甲子太郎と鈴木三樹三郎)、内海次郎、江田小太郎、加納道之助、清原清、佐原太郎、篠原泰之進、藤堂平助、富山弥兵衛、橋本皆助、服部三郎兵衛、毛内監物の合計15人。
著者は、新選組の側でなく御陵衛士の側に視点を置き、論を展開している。
子孫筋、各地の図書館や資料館に照会し、史料を丹念に調べ、時には聞き取り調査も行い、検討を重ねた模様。
御陵衛士の研究として質・量ともに充実しており、後続の研究書に参考として用いられることも多い。
本書は昭和52年(1977)、限定1000部の私家本として出版された。
ちなみに平成16年(2004)、著者による同趣旨の『新選組・高台寺党』が新人物往来社より刊行された。
内容は、組織の興亡と人物列伝の2部構成であること、上記15人を取り上げていることで、前著と一致する。
ただ、完全に同じというわけではない。27年の間に新しく判明した事実もあって、大幅な削除と加筆修正がなされている。
中でも伊東甲子太郎、阿部十郎、服部三郎兵衛の項目は全面改稿された。
より進んだ研究という意味では、『新選組・高台寺党』が優位であり、著者の長年の成果を知るにはこの1冊でも事足りよう。
しかし、前著にあって後著で割愛された事柄にも、興味深いものがある。例えば、藤堂平助と壬生・南部家との関わりなど、切り捨ててしまうには惜しい逸話だ。
本書『高台寺党の人びと』と『新選組・高台寺党』の両方を読むことが、理想的と思う。
余談だが、著者によると「高台寺党」は後世の人々が使い出した通称であって、本来の名称は「禁裏御陵衛士」もしくは「孝明天皇御陵衛士」「泉山御陵衛士」であるそうだ。
にもかかわらず「高台寺党」を敢えて書名に用いた理由は、「御陵衛士」より世の認知度が高いとの判断であろう。

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