新選組の本を読む ~誠の栞~

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 和田慎二『あさぎ色の伝説』 

長編マンガ。激動の幕末を生きる新撰組、沖田総司の青春を描くシリーズ。全10話が発表されている。

『スケバン刑事』『超少女明日香』『ピグマリオ』などを代表作とする作者としては、異色とも言える時代物。
白泉社のマンガ誌『LaLa』『花とゆめEPO』への掲載が初出。以下、発表の順番に列記する。

「風車」 (1976 読み切り)
元治元年春の設定。シジミ売りの佐平が何者かに斬殺され、一人娘お美津は衝撃のあまりなすすべもない。佐平と親しかった総司は、お美津に自分が犯人だと告白し、仇を討ちたければ自分を正面から憎めるようになって来い、と叱る。内気で引っ込み思案のお美津だったが、自らを励まし自立しようとする。
一方、長州藩士・桂小五郎は、「無辜の町人を殺害した新撰組を討つべし」と同志らを煽動していた。

「試衛館の鷹 第1章」 (1976 読み切り)
文久元年初秋の設定。宗次郎(元服前の総司)は、高尾山で関宿藩の姫と乳母に出会い、ふたりの命を狙う同藩の反主流派と戦うはめになってしまう。浮き世離れした姫の言動に手を焼きながらも、いつしか互いの心は通いあう。幼い日の出会いの記憶が甦った時には、別れが待っていた。

「試衛館の鷹 第2章」 (1977 前後2回)
文久元年冬と推測される話。初めて人を斬った宗次郎は、苦悩のあまり惑乱。小石川養生所に担ぎ込まれ、年若い女医チエと出会う。そして、宗次郎に斬られた浪人も、養生所での治療により命を取り留め、快方に向かっていた。浪人は、宗次郎の人柄と天賦の剣才を知って復讐の気持ちをなくす一方、悪性腫瘍を患っており、医師から余命宣告される。

「試衛館の鷹 第3章」 (1977 前後2回)
文久2年早春と推測される話。原田左之助が富くじで20両を当て、試衛館一同は吉原遊郭へ繰り出す。無理やり連れていかれた宗次郎は、吉原の大門組一家を束ねる女親分・竜子と出会う。
竜子に紹介された見世に上がり、こざと太夫を敵娼とされ、ふと気づいた時には逃げ場を失っていた。
その時、酔った侍客が見世に押しかけ、刀を抜いて騒ぎを起こす。

「試衛館の鷹 第4章」 (1977 前後2回)
文久2年春と推測される話。土方歳三は、ヤクザに追われる幼い少女を偶然に救った。何も語ろうとしない少女につきまとわれ、困惑する歳三の胸に、過去の思い出がよみがえると共に、将来への展望を持てない鬱屈と苦悩がのしかかる。

「試衛館の鷹 第5章」 (1977-78 全3回)
文久2年夏の設定。江戸に麻疹が流行り、小石川養生所には薬を求める人々が殺到。宗次郎はチエの薬草探しを手伝った後、自分も出稽古先で発病してしまう。布田宿の古寺に伏せるが、病状は重かった。
そこへ、姉ミツに似た女性が現れ、宗次郎に薬を飲ませる。

「水鏡」 (1978 読み切り)
文久3年初冬の設定。新参ながら腕の立つ隊士・本間丈太郎は、快活な性格で皆に好かれる。総司とも親しかったが、些細な誤解から反発し、総司に恋する娘お吉を強引に手に入れた。しかし、頻発する辻斬り事件の犠牲となる。犯人の正体に気づいたのは、総司ひとりだった。

「風のまつり唄」 (1978 全4回)
文久2年暮れから翌3年、試衛館一党が、浪士組に加盟して京へ上る物語。芹沢鴨との出会い、本庄宿での篝火騒動、清河八郎の策謀、芹沢・近藤らが残留し会津藩預かりとなる経緯を描く。
総司が、江戸へ去る清河に渡した餞別は、百人一首(歌がるた)の右近の札だった。

「菊一文字」 (1988 前後2回)
元治元年春と推測される話。戦いの中で愛刀を損じた総司は、橋の下に住む刀剣商・茂兵と知り合い、赤錆びた刀を無料で譲り受ける。それを研ぎに出したところ、名刀・菊一文字と判明。正当な対価を支払おうと思うものの、茂兵は何者かに殺害される。
一方、会津藩の周旋により、篠原咲之進と名乗る美形が入隊する。総司は、咲之進が実は女であることに気づいていた。

「夢桜」 (1989-90 全3回)
元治元年初夏と推測される話。新撰組の幹部らは、咲之進が男を装い入隊してきた意図を計りかねる。土方は、会津藩から送り込まれた調査役かと疑う。
咲之進から真剣勝負を挑まれた総司は、人目につかない杉木立の中、季節外れの花を咲かせる桜の木の下へと連れていった。咲之進は、亡き芹沢鴨の仇を討つと宣言し、刀を抜く。

沖田総司が悩み傷つきながらもまっすぐに成長し、活躍する姿を描いた作品。シリアスなストーリーものだが、適度にギャグもあり、悲愴なだけの話にはなっていない。
天真爛漫な総司、知謀家の土方歳三、朴訥な近藤勇といった人物造形は、司馬遼太郎『新選組血風録』『燃えよ剣』の影響を感じさせる。

土方や近藤、同志らが総司を見守る視線は、厳しくも温かい。総司のキャラクターや活躍に加え、試衛館一党の人間関係、男の友情を爽やかに描いたところも、本作が人気を博した理由だろう。

作者は執筆当時、本シリーズをライフワークとする意気込みを語っていたが、結果的に中断したままとなった。10年の間を空けながら続編を発表しているので、意欲を失ったわけではなさそう。
中断の理由について、新撰組研究が進み新事実が次々発表されるため当初の設定が時代遅れになったとか、時代物ゆえに背景を描く手間暇が大変だったとか、編集部とのトラブルがあったとか、様々な噂を聞くものの真相は不明である。

作者が2011年7月、急病により61歳で世を去ったことは惜しまれる。当時も雑誌連載を持ち、現役活躍中だった。存命であれば、本シリーズ新作が発表される可能性もあったろう。

本シリーズの単行本は、白泉社から下記7タイトルが出版されている。

1.『あさぎ色の伝説 1 試衛館の鷹』 LaLaデラックスコミックス 1977  
 「試衛館の鷹 第1章」「試衛館の鷹 第2章」「試衛館の鷹 第3章」「風車」を収録。
2.『あさぎ色の伝説 2 試衛館の鷹』 LaLaデラックスコミックス 1978
 「試衛館の鷹 第4章」「試衛館の鷹 第5章」「水鏡」を収録。
3.『あさぎ色の伝説 風のまつり唄』 花とゆめコミックス 1979
 「風のまつり唄」「水鏡」と年譜を収録。
4.『あさぎ色の伝説 1』 花とゆめコミックス 1979
 「試衛館の鷹 第1章」「試衛館の鷹 第2章」「試衛館の鷹 第3章」を収録。
5.『あさぎ色の伝説 2』 花とゆめコミックス 1979
 「試衛館の鷹 第4章」「試衛館の鷹 第5章」「風車」を収録。
6.『あさぎ色の伝説 3』 花とゆめコミックス 1979
 3の改題であり、内容は同じく「風のまつり唄」「水鏡」と年譜を収録。
7.『あさぎ色の伝説 4』 花とゆめコミックス 1990
 「菊一文字」「夢桜」を収録。

いずれも版元品切れ、中古のみ流通している。復刊を望む声も大きく、何とかならないものだろうか。

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