新選組の本を読む ~誠の栞~

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 菊地明・伊東成郎編『新選組史料大全』 

史料集。出版されると昨秋に情報が流れてから約1年、ようやく刊行に至った。
実物は書店の店頭でざっと確認しただけなのだが、とりあえず思ったことを書いておきたい。

本書は、かつて新人物往来社から刊行された『新選組史料集』『続 新選組史料集』を底本として、その後に発見・公開された史料や、前2冊に収録されなかった史料を新たに加え、再編集したものだという。
いずれも、来歴や内容について解説がなされ、語句の註解が付いている。
本文は、史料の性質によって全4章に分かれている。

以下、目次をもとにして収録内容を紹介する。
それぞれ末尾の〈正〉は『新選組史料集』に、〈続〉は『続 新選組史料集』にも収録されていたもの。
※は、今回新たに加えられた史料について、過去の出版・収録歴を簡単に調べ、後にまとめて注記した。

第一章 (新選組隊士自身による記録)
島田魁日記〔島田魁〕             〈正〉
中島登覚書〔中島登〕             〈正〉
立川主税戦争日記〔立川主税〕         〈正〉
近藤芳助書翰〔近藤芳助〕           〈正〉
谷口四郎兵衛日記〔谷口四郎兵衛〕       〈続〉
戊辰戦争見聞略記〔石井勇次郎〕        〈続〉
函館戦記〔大野右仲〕             〈正〉
取調日記〔山崎丞〕              〈続〉
金銀出入帳                  〈正〉
秦林親日記〔秦林親〕             〈正〉
戦友姿絵〔中島登〕               ※1
杉村義衛遺稿「名前覚」〔杉村義衛〕       ※2
七ケ所手負場所顕ス〔永倉新八〕        〈正〉
新選組隊士名簿(編)             〈正〉

第二章 (新選組と接触した人物による同時代の記録
廻状留〔石坂周造〕              〈続〉
文久三年御上洛御供旅記録〔井上松五郎〕    〈続〉
旅硯九重日記〔富沢忠右衛門〕          ※3
佐藤彦五郎日記〔佐藤彦五郎〕          ※4
新選組金談一件〔藤田和三郎〕          ※5
五兵衛新田・金子家文書            〈続〉
流山関係文書
  吉野家文書                〈続〉
  小松原家文書               〈続〉
  恩田家文書                〈続〉
平田宗高従軍日録〔平田宗高〕         〈続〉
官軍記〔富田重太郎〕             〈続〉
荒井治良右衛門慶応日記〔荒井治良右衛門〕    ※6
戊辰十月賊将ト応接ノ始末〔渋谷十郎〕     〈続〉

第三章 (同時代の第三者による新選組の記録)
日本史籍協会叢書〔日本史籍協会編〕       ※7
  会津藩庁記録
  東西紀聞
  甲子雑録
  連城紀聞
  丁卯雑拾録
  中山忠能日記
  中山忠能履歴資料
  朝彦親王日記
  吉川経幹周旋記
  嵯峨実愛日記
  続再夢紀事
  採襍録
〈参考史料〉官武通紀              ※8
藤岡屋日記                   ※9
改訂肥後藩国事史料               ※10

第四章 (明治以降に刊行・発表された回顧録や編纂物)
新撰組始末記〔西村兼文〕           〈正〉
今昔備忘記(抄)〔佐藤玉陵〕         〈続〉
両雄士傳補遺〔橋本清淵編輯〕         〈続〉
柏尾の戦〔結城禮一郎〕             ※11
柏尾坂戦争記〔野田市右衛門〕         〈正〉
維新史の片鱗〔有馬純雄〕           〈続〉
御祭草紙〔内山鷹二〕             〈続〉
夢乃うわ言〔望月忠幸〕            〈続〉
松本順関係文書〔松本順〕    
  噬臍録                   ※12
  蘭疇                    ※13
  蘭疇自伝                  ※14
近藤勇の事〔鳥居華村〕            〈続〉
近藤勇の伝〔丸毛利恒〕            〈続〉
近藤勇 土方歳三〔依田学海〕         〈続〉

※1 かつて『別冊歴史読本』などに、主要部分がカラーで掲載された。
   本書ではモノクロ印刷だが、画賛が活字化され、解説が付いている。
※2 永倉新八『新撰組顛末記』にも掲載。
※3 多摩市教育委員会より「多摩市文化財調査資料」として2012年に刊行。
※4 日野市より「日野宿叢書」として2005年に刊行。
※5 『新選組日誌』文庫版(2013)に、関連箇所の多くが抜粋。
※6 原史料所有者により2002年に活字化、自費出版物として刊行された。
※7 『新選組日誌』文庫版(2013)に、関連箇所の多くが抜粋。
※8 国書刊行会(1913)、東京大学出版協会(1976)などから刊行。
※9 三一書房(1987-1995)から刊行。
※10 国書刊行会(1973)から刊行。
※11 掲載誌『旧幕府』の複製合本が原書房(1971)から刊行。
※12 松本順の回顧手記。明治期、医療業界紙に連載されたものの中断したままとなった。
    過去、書籍に収録されたことはなかったらしい。
   「蘭疇」「蘭疇自伝」より早期に成立し、これらとは異なる表現で書かれている点で貴重。
※13 日本評論社『明治文化全集』第24巻(1993)に収録。
※14 平凡社東洋文庫『松本順自伝・長与専斎自伝』(1980)に収録。 『幕末鬼骨伝』参照。

当然ながら、必ずしも史料の全文が載っているわけではない。
分量が多く、新選組と関連のない記述が多いものについては、関連のある部分だけを抜粋している。

山崎丞「取調日記」は、『続 新選組史料集』では隊士名簿の部分しか取り上げられていなかった。
しかし、本書では全部を掲載している。

「新選組隊士名簿(編)」は、『新選組史料集』では「隊士名簿に見る新選組の変遷」と題する論考だった。
また、『新選組大人名事典』下巻(2001)にも、似たような名簿史料の比較解説が載っていた。
ただし、今回は新たな史料を採り入れ、より充実した内容となっている様子。

『新選組史料集』『続 新選組史料集』に収録されていたものの、本書からは漏れた史料もある。
例えば、「伯父伊東甲子太郎武明・岳父鈴木三樹三郎忠良」「近藤勇の妻及子」「土方歳三の少年時代」「新撰組長芹沢鴨」「綾瀬村の近藤勇」など。
本書を手に入れたとしても、前2冊を手放すわけにはいかない気がする。

2014年、KADOKAWAより出版。
体裁はA5判上製・函付、全1007ページ。本文には辞書・事典用の紙が使われているかに見えたが、それでも全体の厚みが5cmはあると思う。
税別価格25,000円は、ボリューム的に妥当としても、あまり気軽に買える値段とは言えない。
前2冊を持っていないとか、大きな図書館へ度々出向くのが困難とかいった向きは、懐と相談してみてもよいのではなかろうか。

新選組史料大全




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