司馬遼太郎展「21世紀“未来の街角”で」
【没後20年 司馬遼太郎展「21世紀“未来の街角”で」】を見にいった。
国民的作家・司馬遼太郎については、あれこれ説明するまでもなかろう。
幕末を題材にした作品も多く手がけており、そのいくつかは当ブログでもすでに紹介した。
特に『新選組血風録』『燃えよ剣』は、今も「新選組小説の金字塔」というべき名作である。
会場の入口(撮影可)では、司馬さんのシルエットが奥へ歩いて行く。

続く通路は「司馬遼太郎のタイムトンネル」。
両側の壁に、『産経新聞』夕刊連載時(全1335回)の『竜馬がゆく』画像がずらりと並ぶ。

本文は書籍でも読めるが、当時の挿絵を見られる機会はめったにない。
掲載のため縮小印刷されていても、印象的な名画の数々。
画家は、「昭和時代が生んだ挿絵画家の第一人者」岩田専太郎である。

上は「寺田屋騒動」、おりょうが竜馬と三吉慎蔵に危急を報せる場面。
その先に、いよいよメインの展示(撮影不可)。
大きく3部に分かれ、それぞれに作品ごとのコーナーが設置されている。
「戦国動乱 16世紀の街角」…『国盗り物語』『関ヶ原』『功名が辻』『播磨灘物語』『城塞』――
「維新回天 19世紀の街角」…『菜の花の沖』『竜馬がゆく』『胡蝶の夢』『峠』『花神』『坂の上の雲』――
「裸眼の思索 21世紀の街角」…『街道をゆく』『この国のかたち』『風塵抄』――
全部は書き切れない。
展示品も、バラエティ豊富。
◆史料類… 歴史上人物の書状や遺品、布陣図、屏風絵、写真
◆出版関連… 自筆原稿、初出誌、書籍、装画の原稿、装丁デザイン版下
◆映像関連… NHKドラマ化された作品で使われた甲冑や衣裳
◆本人ゆかりの品々… 新聞記者時代に資料類を読みながら寝転んだ京都宗教記者クラブのカウチ(長椅子)、初期作品の執筆に使用した文机、自筆スケッチ画
――等々。これらを作品ごとに取り合わせた展示方法が面白い。
新選組関連の展示も、もちろん「維新回天 19世紀の街角」の中にあった。
『燃えよ剣』… 土方歳三の鉢金と送り状、石田散薬の効能書きとつづら
『新選組血風録』… 髑髏図を刺繍した近藤勇の稽古着、近藤の書状(広島出張の事前報告)、沖田総司の年賀状(慶応元年)、新選組の袖章
いずれも、土方歳三資料館と小島資料館からそれぞれ借りた複製品の様子。
史料保護のため、複製展示はやむをえないと思われる。
かなり精巧に造られており、実物と並べても素人にはおそらく見分けがつかないだろう。
上映コーナーでは、生前のインタビュー映像がリピートされていた。
1989年「NHKスペシャル」で放送されたトークドキュメント「太郎の国の物語」から約6分間を抜粋したもの。
テーマは、明治という国家について。
曰く、明治初期から中期にかけて、ある種の道徳的緊張感に因む気風が国家を支えていた。
道徳的緊張感とは、自らを律し、節度を弁え、名を惜しむ侍の生き方、すなわち武士道に由来する。
そうした緊張感を、司馬さんは「圧搾空気」と形容した。
しかし明治も終わりに近づくと、この「圧搾空気」が失われてしまったのだという。
明治の初期から中期、社会を構成したのは、幕末維新の動乱を生きのびた人々であったろう。
自身が戦場へ赴かずとも、身近な人間を通じて間接的にでも、何らかの体験はしていたはずだ。
だから、人々は動乱で失われた多くの命を思い、それらに報いるため優れた国家を造らなければ、という使命感を多かれ少なかれ持ち合わせていた。
ところが、世代交代によって動乱の記憶が薄れるとともに、その使命感も薄れていった――
――なんとなく、こんな勝手な想像が頭をよぎった。
最後は、「二十一世紀に生きる君たちへ」の自筆原稿と大活字パネル。
子供たちにも伝わるよう平易な言葉で書かれたメッセージだけれども、大人もまた考えるべき内容だと思う。
「あなたが今歩いている二十一世紀とは、どんな世の中でしょう。」
もし自分が司馬さんに問われたなら、何と答えればよいのか。
適切な言葉が出てこない。
出口の手前には、「司馬遼太郎記念館の書斎が見える庭」と銘打った撮影スポット。
この書斎が主人を失って「もう20年」と言うべきか、「まだ20年」と言うべきか……。

この司馬遼太郎展は、全国を巡回している。開催スケジュールは下記のとおり。
2016年10月22日~12月4日 北九州市立文学館
2016年12月14日~12月24日 大阪・阪神百貨店梅田本店
2017年4月1日~5月25日 高知県立文学館
2017年6月2日~7月9日 横浜・そごう美術館
2017年9月16日~10月15日 愛媛県美術館
2017年10月21日~12月10日 姫路文学館
すでに終了したところもあるが、今後開催される地域の方々はどうぞお楽しみに。

国民的作家・司馬遼太郎については、あれこれ説明するまでもなかろう。
幕末を題材にした作品も多く手がけており、そのいくつかは当ブログでもすでに紹介した。
特に『新選組血風録』『燃えよ剣』は、今も「新選組小説の金字塔」というべき名作である。
会場の入口(撮影可)では、司馬さんのシルエットが奥へ歩いて行く。

続く通路は「司馬遼太郎のタイムトンネル」。
両側の壁に、『産経新聞』夕刊連載時(全1335回)の『竜馬がゆく』画像がずらりと並ぶ。

本文は書籍でも読めるが、当時の挿絵を見られる機会はめったにない。
掲載のため縮小印刷されていても、印象的な名画の数々。
画家は、「昭和時代が生んだ挿絵画家の第一人者」岩田専太郎である。

上は「寺田屋騒動」、おりょうが竜馬と三吉慎蔵に危急を報せる場面。
その先に、いよいよメインの展示(撮影不可)。
大きく3部に分かれ、それぞれに作品ごとのコーナーが設置されている。
「戦国動乱 16世紀の街角」…『国盗り物語』『関ヶ原』『功名が辻』『播磨灘物語』『城塞』――
「維新回天 19世紀の街角」…『菜の花の沖』『竜馬がゆく』『胡蝶の夢』『峠』『花神』『坂の上の雲』――
「裸眼の思索 21世紀の街角」…『街道をゆく』『この国のかたち』『風塵抄』――
全部は書き切れない。
展示品も、バラエティ豊富。
◆史料類… 歴史上人物の書状や遺品、布陣図、屏風絵、写真
◆出版関連… 自筆原稿、初出誌、書籍、装画の原稿、装丁デザイン版下
◆映像関連… NHKドラマ化された作品で使われた甲冑や衣裳
◆本人ゆかりの品々… 新聞記者時代に資料類を読みながら寝転んだ京都宗教記者クラブのカウチ(長椅子)、初期作品の執筆に使用した文机、自筆スケッチ画
――等々。これらを作品ごとに取り合わせた展示方法が面白い。
新選組関連の展示も、もちろん「維新回天 19世紀の街角」の中にあった。
『燃えよ剣』… 土方歳三の鉢金と送り状、石田散薬の効能書きとつづら
『新選組血風録』… 髑髏図を刺繍した近藤勇の稽古着、近藤の書状(広島出張の事前報告)、沖田総司の年賀状(慶応元年)、新選組の袖章
いずれも、土方歳三資料館と小島資料館からそれぞれ借りた複製品の様子。
史料保護のため、複製展示はやむをえないと思われる。
かなり精巧に造られており、実物と並べても素人にはおそらく見分けがつかないだろう。
上映コーナーでは、生前のインタビュー映像がリピートされていた。
1989年「NHKスペシャル」で放送されたトークドキュメント「太郎の国の物語」から約6分間を抜粋したもの。
テーマは、明治という国家について。
曰く、明治初期から中期にかけて、ある種の道徳的緊張感に因む気風が国家を支えていた。
道徳的緊張感とは、自らを律し、節度を弁え、名を惜しむ侍の生き方、すなわち武士道に由来する。
そうした緊張感を、司馬さんは「圧搾空気」と形容した。
しかし明治も終わりに近づくと、この「圧搾空気」が失われてしまったのだという。
明治の初期から中期、社会を構成したのは、幕末維新の動乱を生きのびた人々であったろう。
自身が戦場へ赴かずとも、身近な人間を通じて間接的にでも、何らかの体験はしていたはずだ。
だから、人々は動乱で失われた多くの命を思い、それらに報いるため優れた国家を造らなければ、という使命感を多かれ少なかれ持ち合わせていた。
ところが、世代交代によって動乱の記憶が薄れるとともに、その使命感も薄れていった――
――なんとなく、こんな勝手な想像が頭をよぎった。
最後は、「二十一世紀に生きる君たちへ」の自筆原稿と大活字パネル。
子供たちにも伝わるよう平易な言葉で書かれたメッセージだけれども、大人もまた考えるべき内容だと思う。
「あなたが今歩いている二十一世紀とは、どんな世の中でしょう。」
もし自分が司馬さんに問われたなら、何と答えればよいのか。
適切な言葉が出てこない。
出口の手前には、「司馬遼太郎記念館の書斎が見える庭」と銘打った撮影スポット。
この書斎が主人を失って「もう20年」と言うべきか、「まだ20年」と言うべきか……。

この司馬遼太郎展は、全国を巡回している。開催スケジュールは下記のとおり。
2016年10月22日~12月4日 北九州市立文学館
2016年12月14日~12月24日 大阪・阪神百貨店梅田本店
2017年4月1日~5月25日 高知県立文学館
2017年6月2日~7月9日 横浜・そごう美術館
2017年9月16日~10月15日 愛媛県美術館
2017年10月21日~12月10日 姫路文学館
すでに終了したところもあるが、今後開催される地域の方々はどうぞお楽しみに。
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