新選組の本を読む ~誠の栞~

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 南原幹雄『新選組探偵方』 

短編小説集、オムニバス形式の7編を収録。
新選組にまつわる数々の事件の謎に、沖田総司と島田魁が挑む時代ミステリー。

「総司が見た」
芹沢暗殺事件の真相。
屯所を襲撃した謎の一団によって、芹沢鴨・平山五郎・お梅が殺害される。
唯一の手がかりは、現場に残された新選組の隊服だった。世間には「新選組の内紛」という噂が広がる。
自分自身も疑いをかけられ困惑する総司のもとに、お梅の妹・お菊が訪ねてくる。
お菊に強く責められた総司は、真犯人を捕えることを約束し、監察の島田を従えて捜査に乗り出す。

「残菊一刀流」
山南脱走の前触れとなった情報漏洩事件の顛末。
池田屋事件の後、しばらく療養していた総司は、事件を振り返る。
当日、桂小五郎が現場にいなかったのは、新選組の内部情報が漏洩しているためかもしれない、と懸念した。
一方、お梅からの仕送りがなくなったお菊は、三本木の芸妓となっていた。
総司は彼女に、桂小五郎の情婦・幾松の挙動を、それとなく探ってくれるよう依頼する。

「風雲六角獄」
六角獄の囚人虐殺事件の真相。
元治元年、禁門の変の戦火は広く市街に及び、火の手は三条新地の牢屋敷、通称「六角獄」にも迫った。
獄内には、天誅組の乱・生野の乱・木像梟首事件・池田屋事件などで逮捕された志士達も収監されていたが、未決囚も含め、何者かに虐殺される。
またも「新選組の仕業」という噂が世間に広まり、総司は真相を突き止めるべく、島田と共に聞き込みを始める。
そして、堀川に毒が流されるという出来事を耳にした。

「祇園石段下の暗殺」
谷三十郎暗殺事件の真相。
不動堂村の新屯所に投石される嫌がらせが続き、新選組隊士達は苛立ちを募らせていた。
その上、七番組長・谷三十郎が、祇園石段下で殺害された。
犯人と疑われた斎藤一に懇請され、総司と島田は真犯人を追う。
そんな時、洛北鷹ヶ峰へお菊と共に出かけた総司は、石を投げて鳥を打ち落とす猟師達の存在を知る。

「銭取橋の斬撃」
武田観柳斎が殺害された真相。
斎藤一と篠原泰之進は、武田観柳斎を斬るよう命令され、夜道を尾行する。
武田は、薩摩藩へ接近している嫌疑が濃厚だった。
ところが、銭取橋にさしかかった時、正体不明の刺客が突如現れて武田を斬殺し、逃げ去った。
不覚を取った斎藤は、総司と島田に真相究明を依頼する。

「よく似た二人」
川島勝司が処断される原因となった、恐喝事件の始末。
洛北の商家に、「新選組の富山弥兵衛」を騙って、大金を強請り取ろうとする一味が現れた。
ニセ隊士を捕えようと、総司と島田がこの家に張り込むが、成果は得られない。
しかし、ほとぼりが冷めた頃、再び一味が出没し、後を追った目明かしが斬殺される。
急いで現場に駆けつけた総司の前に、思わぬ人物が現れる。

「耳のない男」
新選組と御陵衛士との軋轢に繋がる暗殺未遂事件の経緯。
伊東甲子太郎の一派が、隊を分かち出ていってから数日後のこと、近藤勇は謎の集団に襲撃される。
刀を振るって斥けた時、偶然に刺客のひとりの耳を切り落とした。
後日、総司がお菊と出かけた帰途、5人の刺客に襲われる。

ホームズ沖田とワトソン島田の冒険を描く探偵小説、といった趣向。
事件自体はそれほど複雑怪奇なものではないが、京都の習俗などを取り入れたストーリーがなかなか面白い。
同じ作者の短編小説集『新選組情婦伝』とはイメージがまったく異なり、とても楽しめる。

「力(りき)さん」「総司さん」と呼び合うふたりの、息の合ったコンビぶりが面白い。
任務の話だけでなく、プライベートなアドバイスをする場面もあって、しみじみと感動的。
斎藤一と総司とのさりげない友情も、心温まる。

独自の人物として、菱屋お梅の妹・お菊が登場。総司との仲が、少しずつ深まっていく。
殺伐とした日々の中、彼女との時間が唯一の安らぎという、総司の青春模様が切ない。

端役ながら、西郷吉之助、中村半次郎も登場し、人物像がリアルに描写されている。

新選組が市中に目明かしなどの諜報員を放ち、会津藩・見廻組・薩摩藩にも密偵を送り込んでいる、という設定は、いかにもありそうな雰囲気で興味深く思えた。

いずれの作品も、実際にあった、もしくはあったとされている事件を題材として、通説とは異なる独自の真相を描いている。もちろん創作ではある。
ただ、「通説が必ずしも真実とは限らない。例えば、このような解釈も可能ではないか」という、物事を別の角度から見る姿勢の提示として、新鮮に思えた。

細かいことだが、実際の谷三十郎の死亡は慶応2年、不動堂村への屯所移転は翌3年である。
本作では、屯所移転が1年早く見積もられている様子。

また、武田観柳斎の死亡日は、かつて慶応2年9月28日とされていたが、その後の研究により翌3年6月22日説が有力となっている。
そして、この慶応3年の3月には、伊東甲子太郎らが新選組から分離し、禁裏御陵衛士を組織した。
斎藤一と篠原泰之進も御陵衛士に加盟している。
つまり、この2人が新選組隊士として武田暗殺の密命を受ける、という可能性は考えにくい。
本作は、やはりフィクションとして楽しむに留めておけばよいと思う。

ちなみに作者は、本作について『英雄の時代1 新選組』(教育書籍/1991)の中で「特に沖田が好きだったわけではなく、話が作りやすかったから」「小説にしたい人物は山崎烝」などと語っている。
ただその後、山崎を主人公とする小説を発表した、という話は聞いていない。

双葉社より単行本(1988)、文庫本(1922)が発行された。また福武文庫(1966)も出ている。

新選組探偵方
(双葉文庫)
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おくればせながら、明けましておめでとうございます。今年も楽しませてくださいね。

2012/01/06(Fri) |URL|なおまゆ [edit]

Re: なおまゆさんへ

拙い記事をご覧いただいて恐れ入ります。
ご期待に添えるよう努めてまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

2012/01/07(Sat) |URL|東屋梢風 [edit]

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