新選組の本を読む ~誠の栞~

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 三好徹『私説・沖田総司』 

短編・中編小説集。幕末~明治の暗殺事件について推理・考察する4編を収録。
小説の形式をとりながら、内容的にはノンフィクションに近い作品もある。

表題作の短編「私説・沖田総司」は、大坂角力との乱闘事件、内山彦次郎暗殺、芹沢鴨暗殺、出自と生い立ち、池田屋事件、山南切腹、江戸での療養と最期、と列記しつつ、彼の人間像を解き明かそうとする内容。

作者は、沖田を「近藤や土方の人間兇器」として捉えようとしている様子。
何やら意思を持たない道具扱いのようにも感じられ、頷きがたい。

他にも、疑問を感じる部分がいくつかある。

◯沖田が初めて人を斬ったのは、大坂角力乱闘事件である
→ それ以前に斬ったことがあったとしても記録に残っていない、もしくは記録が発見されていない、という可能性を無視している。

◯近藤らが芹沢を暗殺したのは、まともに闘えば沖田でさえ勝てそうになかったから
→ 真相(犯人や動機)を秘して殺害するのが暗殺であり、確実に殺すだけが目的ならそういう手段をとる必然性はない。この場合、「新選組の内訌」と知られないことを優先した措置ではないか。

◯池田屋事件で喀血して以降の沖田は、めぼしい戦闘に加わっていない
→ 池田屋で体調を崩したという証言はあるが、喀血したという証拠はない。出動記録に出動隊士の名が残らないケースも間々あり、戦闘に加わっていないと断定できない。慶応元年の酒井兵庫斬殺、慶応3年の浅野薫斬殺は、沖田が行ったとされている。

逆に納得できたのは、沖田の死因が病気による衰弱ではなく、喀血が喉に詰まって窒息したという見解。
彼が甲陽鎮撫隊に日野あたりまで同行したとも、療養中に中野へ近藤ツネや勇五郎を訪ねていったとも言われ、死期が間近なほど衰弱してはいなかった可能性もある。
さらに、臨終の際に誰も側にいなかったのが事実とすれば、直前まで危険な状態ではなかったからであろう。

作者が壬生の八木邸や旧前川邸を訪問した体験の模様は、なかなか面白い。
また、本作と作者の長編小説『沖田総司 六月は真紅の薔薇』と併読してみるのも一興と思う。

他の収録作品は、下記のとおり。
「人斬り彦斎」 河上彦斎の刑死の真相を探る。佐久間象山暗殺に関連し、新選組にも多少触れる。
「暗殺始末」 大村益次郎暗殺事件と黒幕の存在、日本の司法の独立性、裁判の公正について。
「参議暗殺」 架空の新聞記者を主人公として、広沢実臣暗殺事件の真相を探る。

本書は、中央公論社から単行本(1972)、次いで文庫本(1981)が出版された。

「私説・沖田総司」は、下記のアンソロジーにも収録されている。
『新選組烈士伝』 角川文庫 2003
『新選組アンソロジー その虚と実に迫る 上巻』 舞字社 2004

私説・沖田総司
(中公文庫)
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