こんばんわ。
いつも有難うございます。
待ってました!!!!!!!!!
大好きな本です。
愛情あふれる眼で書かれた隊士一人ひとりが生き生きと活躍し、概ね悲劇的に亡くなってゆくのは辛いですが、その中に、何かしら人間っていいぞというメッセージを感じました。
個人的には、柴司のシーンが感動しました。土方が本来持っていた「情の篤さ」が発露されるところは涙ものです。
何度も繰り返し読んだものです。
ご紹介感謝です。
広瀬仁紀『新選組風雲録』
池田屋事件から箱館戦争を背景に、新選組の面々の壮絶な人生と時代の変転を、哀切込めて描く。
広瀬新選組の集大成とも言える名作。
群像ものであるが、土方歳三と直属の密偵・忠助、女盗賊お多加の3人が展開の中心になっている。
土方歳三は、「鬼副長」として厳しく振る舞うものの、本質は思いやり深く義理堅い人情家。
もと江戸の盗人であった忠助は、土方の腹心となり、山崎烝と協力して諜報活動にあたる。
変装得意の女賊お多加は、恋人の吉田稔麿を失って新選組への復讐に燃え、長州に肩入れするようになる。
(ただし、落日篇で信頼する手下・善八を失って以降は、本筋に関わらなくなる。)
忠助とお多加という架空人物の視点から多角的に描かれた、新選組の姿や時代の移りゆくさまも、注目どころである。
上記以外の登場人物では、沖田総司や近藤勇ほか試衛館一門、島田魁、松本良順、水野弥太郎、細谷十太夫、ブリューネ、カズヌーブなども、活写されている。
また、桂小五郎と来島又兵衛も、新選組と敵対する立場でありながら印象的に描かれる。
各篇の大まかな内容は、下記のとおり。
洛中篇
池田屋事件から禁門ノ変、天王山の追討まで。
清水ノ舞台で土方歳三と出会った忠助が、密偵として使われることになる。
吉田稔麿が池田屋事件で戦死。お多加は復讐を決意し、桂小五郎を危地から救出して匿う。
激斗(激闘)篇
近藤勇の江戸下りから三条制札事件の頃まで。
お多加、桂の京都脱出を助ける。伊東甲子太郎らが新選組に加盟。
近藤勇と松本良順が知り合い、以後親しく交流する。
屯所移転問題による対立から、伊東の言葉を信じた山南敬助が脱走、切腹する。
河合耆三郎の切腹、谷三十郎の粛清、武田観柳斎の粛清など。
落日篇
孝明天皇崩御から油小路事件まで。
新選組の密偵・床伝の災難に対して、沖田が一矢を報いる。
岩倉具視と薩摩の陰謀により、お多加の手下・善八が殺害される。
藤堂平助の苦悩と討死。
戊辰篇
天満屋事件から会津の城下戦突入まで。
淀・千両松の戦いで重傷を負った山崎烝、死去する。
長州が官軍となり、新選組が敗退したにも拘らず、お多加の心は晴れない。
近藤の刑死。沖田の病死。
土方、斎藤一に後事を託して会津を離れる。
函館篇
仙台藩恭順から五稜郭開城まで。
土方の戦死。
最後、箱館を脱出し京都へ来た忠助と、尼僧のお多加が、清水ノ舞台で出会う。
『沖田総司恋唄』『土方歳三散華』などとも共通する要素だが、主立った人物の多くが好漢として描かれている。
これを「非現実的でリアリティがない」と思う向きもあるかもしれない。
しかし、この人物造形こそが本作の真骨頂なので、気にせずどっぷり浸ってしまうのが上手い楽しみ方。
ストーリーの性質上、悲愁漂う場面が多いのはやむをえないところだが、時折ユーモラスなエピソードもあるので救われる。
広瀬の時代物全般に言えることながら、言葉遣いや文体そのものが優れ、時代小説らしい興趣に富んでいる。
この素晴らしさを、これまで以上に多くの人に味わってもらいたいと願う。
大陸書房から単行本(1987-1988)、富士見書房から時代小説文庫(1990)、文春文庫(2004)が出版された。
ぜひまた、どこかの出版社から復刊されて欲しいところだ。
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COMMENT FORM
なおまゆさん、コメントありがとうございます。お待たせいたしました。
私も、広瀬仁紀の人物造形が大好きです。
本作を初めて読んだ時、土方歳三も沖田総司も山崎烝もこんなに良い人なのに
こんなふうに亡くなるなんて、運命は残酷だ…と悲しくなりました。
だいたい良い人ばかり出てくる話はイマイチ面白くないのが通り相場ですが、
それを一気に読ませる作者の手腕は大したものだと思います。
「良い人過ぎる」という感想も聞かないわけじゃありませんが、
リアリティを勘違いして性格破綻者のごとき描写をしているヘンテコな小説を読むくらいなら
本作を百回でも千回でも読め!と言いたいです(笑)
個人的には、お多加に、どういう形でもいいから後半も頑張って欲しかったです。
「霞小僧」の異名をとった大盗賊なのに、ちょっともったいなく思えました。
印象的なエピソードが多すぎて、一々挙げるのが困難ですが
忠助が新選組屯所へ忍び込んで土方に捕まるところ、
松本良順が会津で負傷者に牛肉を食べさせようと苦心するところなど
ユーモラスな場面も心に残っています。
こんばんわ。
いつも有難うございます。
私は、この小説を読むと何故か、『燃えよ剣』を観たくなるんです。土方は、栗塚旭さん。登場人物は皆よい人ばかりなんです。原作は勿論、司馬遼太郎なんですが、ドラマは原作より人間描写に力を入れていておもしろいんです。
『土方歳三散華』『沖田総司恋歌』も傑作ですね。
なおまゆさん、再びコメントありがとうございます。
私も、本作について考えると『燃えよ剣』を想起します。
ただし、司馬遼太郎の原作のほうですが。
理由はよくわかりませんが、作品から受ける快楽中枢への刺激が
本作も『燃えよ剣』もよく似ているように感じます。
栗塚旭主演のテレビドラマ『新選組血風録』(1965-1966)と『燃えよ剣』(1970)は
今も根強い人気のある名作ですね。ビデオソフトで観たことがあります。
レギュラー出演者の1人、左右田一平の訃報をつい先日聞いて、残念に思いました。
『沖田総司恋唄』『土方歳三散華』なども含めて、
広瀬新選組がもっともっと多くの人に読まれることを願っています。