新選組の本を読む ~誠の栞~

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 鈴木明『追跡 一枚の幕末写真』 

幕末に撮影されたフランス軍人・旧幕軍士官ら8人の集合写真の、被写体人物を追うルポルタージュ。

著者は、ノンフィクション作家、フリージャーナリストとして知られる。
1979年当時、創刊された写真雑誌に、幕末期の写真のオリジナルを探す連載を持った。
それをきっかけとして、市立函館図書館で問題の集合写真を見た。箱館戦争の前に撮影されたものらしい。
写真には、フランス軍人4人と旧幕軍士官4人、合計8人の人物が写っていた。
彼らの名前も撮影された状況も不明ながら、その雰囲気が強く印象に残ったという。

その後、雑誌『旧幕府』に掲載された別の写真から、旧幕士官のひとりが田島応親と判明。
田島について調べるうち、幕府に招聘されたフランス軍事顧問団との関係が見えてくる。
次いで、問題の写真と同じ顔ぶれが並ぶ別写真を、石黒敬七の著書『巴里雀』で知る。
ここから旧幕士官・細谷安太郎の名が判明し、その子孫と奇跡的な出会いを果たすことに。
パリにはさらに多くの手がかりがあると知り、著者は矢も盾もたまらず旅立つ。

追跡ルポならではの臨場感があり、興奮を味わわせてくれる。
著者の調査にかける執念と行動力には、驚くばかり。
フランスと日本とを行き来し、多大な時間と労力をかけて僅かな手がかりをたぐり、ついにジュール・ブリュネの子孫に巡り会えたくだりには、感動した。
そこに至るまでの過程でも、フランス軍事顧問団長シャノワーヌ、旧幕軍に投じたブッフィエ、被写体人物のマルランとカズヌーヴなどについて、様々な事柄が判明している。
コラッシュの手記に関しても、詳しい言及あり。
学者や研究家の著した研究書とは異なるものの、本書によって世に出た歴史的事実の数々は、非常に貴重である。

本書には、新選組に関する記述はほとんどない。
共に旧幕軍として戦った土方歳三が、所々引き合いに出されている程度だ。
しかし、本書に登場する人々は、新選組とも少なからぬ関わりを持った人物である。
彼らの生き方を知ることによって、新選組の面々も生きた幕末明治という時代をより深く知ることができる。

例えば、著者が心惹かれたという田島応親も、新選組と関わったひとりである。
田島は、鳥羽伏見戦で敗退した会津藩や新選組を大坂から海上輸送、負傷者を横浜語学所病院に入院させるにあたって、すべてを手配した。弱冠18歳のこの体験を、後年『史談会速記録』に残している。
その後、旧幕脱走軍に加わり、フランス軍人の通訳を細谷と共に務めていたことも、新選組の最年少隊士・田村銀之助が、やはり『史談会速記録』にて証言している。

田島が若き日にフランス人と交流を持ったこと、戊辰戦争を体験したことが、その後の人生にどのような影響を及ぼしたか、まさに小説より奇なる事実として興味深い。
そして田島と、彼の孫にあたる百合子との関係についても、いろいろと考えさせられた。

集英社より単行本(1984)、文庫本(1988)が刊行された。ぜひまた復刊されて欲しい名著である。

追跡
一枚の幕末写真
(集英社文庫)
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