新選組の本を読む ~誠の栞~

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 司馬遼太郎『司馬遼太郎 歴史のなかの邂逅』 

司馬遼太郎の作品は、小説や紀行のみならず、エッセイも面白い。
このブログでも、司馬のエッセイ本はすでにいくつか紹介した。それらは生前に出版されたものだが、今回は没後に出版されたものについて述べる。

新潮社刊『司馬遼太郎が考えたこと』は、エッセイの集大成として素晴らしい。
単行本(2001-2002)、文庫本(2005-2006)ともそれぞれ全15巻の構成。
1953年から1996年まで43年間のエッセイを、発表の順番に収録している。

この『司馬遼太郎が考えたこと』を底本として、本書シリーズ『司馬遼太郎 歴史のなかの邂逅』が中央公論新社から出版された。
歴史上の人物(集団・組織も含む)を主題とするものだけを選び出し、主題の時代順に収録している。
単行本(2007)は全4巻の構成。
文庫本(2010-2011)は、単行本をそれぞれ2分冊した全8巻であり、内容は下記のとおり。

第1巻 空海~斎藤道三 (単行本では第1巻)
第2巻 織田信長~豊臣秀吉 (単行本では第1巻)
第3巻 徳川家康~高田屋嘉兵衛 (単行本では第2巻)
第4巻 勝海舟~新選組 (単行本では第2巻)
第5巻 坂本竜馬~吉田松陰 (単行本では第3巻)
第6巻 村田蔵六~西郷隆盛 (単行本では第3巻)
第7巻 正岡子規~秋山好古・真之 (単行本では第4巻)
第8巻 ある明治の庶民 (単行本では第4巻)

特定の時代の人物について読みたい場合、大いに助かる編成である。
新選組や旧幕方人物については、第4巻にまとまっている。以下、第4巻の目次より。

ご先祖さま 〈藤沢東畡/藤沢南岳/菊池五山〉
ふと幕間に 〈花岡青洲〉
洪庵のたいまつ 〈緒方洪庵〉
海舟についての驚き 〈勝海舟〉
男子の作法 〈石黒忠悳〉
六三郎の婚礼 〈山内堤雲〉
武四郎と馬小屋 〈松浦武四郎〉
黒鍬者 〈江原素六〉
鋳三郎と楊枝 〈江原素六〉
芥舟のこと 〈木村芥舟〉
左衛門尉の手紙日記 〈川路聖謨〉
『胡蝶の夢』雑感――伊之助の町で 〈島倉伊之助〉
ああ新選組 〈新選組〉
新選組 〈新選組〉
土方歳三の家 〈土方歳三〉
『燃えよ剣』あとがき 〈土方歳三〉
清河八郎について 〈清河八郎〉
葛飾の野 〈近藤勇〉
新選組の故郷 〈新選組〉
奇妙さ 〈新選組〉
見廻組のこと 〈見廻組/佐々木唯三郎/坂本竜馬〉
ある会津人のこと 〈秋月悌次郎/高崎正風〉
河井継之助 〈河井継之助〉
『峠』のあれこれ 〈河井継之助〉
峠――新潟・長岡 〈河井継之助〉
『最後の将軍――徳川慶喜』あとがき 〈徳川慶喜〉

「ああ新選組」
初出は「週刊文春」1961年9月18日号。
「なんどす、あのミブロどもは」というツカミからしてユーモラスな一編。
近藤勇は「兵は東国に限り候」と称したものの、新選組には大坂の町人あがりの者達もいた。その一人が山崎烝。その山崎烝と同姓同名の人物が司馬の幼友達にいた。その幼友達の家は、なんと新選組の山崎の実家とかつて親類だったという。
新選組隊士らの出身地は東西問わずほぼ全国に及ぶのだが、司馬自身が大阪人であったことから、この作品では特に大坂出身隊士に言及したと思われる。

「『燃えよ剣』あとがき」
初出は『燃えよ剣』ポケット文春版(1964)。
日野の土方歳三生家、佐藤彦五郎子孫宅をそれぞれ訪問した体験。歳三について聞いた話もさることながら、子孫に対面した際の司馬の印象が興味深い。
このあとがきは、新潮文庫版『燃えよ剣』には収録されておらず、本書で読めるのはありがたい。

「清河八郎について」
初出は新国劇公演「暗殺」パンフレット(新橋演舞場/1965)。
新選組に関する言及はないが、幕末志士の生き方の例を分析した視点が面白い。

「奇妙さ」
初出は『新潮現代文学46 司馬遼太郎』(新潮社/1979)。
新選組のような組織は、江戸時代の武家社会には無かったが、庶民の世界には原型が存在したこと。
多摩地域で、農民の武芸修得が容認されていた理由。正義という概念が幕末に登場したこと。
そして、土方歳三という人物に感じた「奇妙さ」を書こうと思ったこと等々、新選組について調査していた当時の思索内容を書き綴っている。

「ある会津人のこと」
初出は「オール讀物」1974年12月号。
会津藩士・秋月悌次郎の生涯。京都で公用方を務めていた文久3年、薩摩藩士・高崎佐太郎(正風)の訪問を受けて、会薩同盟を成立させることとなった。
このエッセイに新選組は登場しない。しかしながら、秋月は新選組と役儀上の面識があった人物である。また、禁門の政変の裏話としても非常に興味深い一編。

なお、「新選組」「土方歳三の家」「葛飾の野」「新選組の故郷」は、『歴史と小説』にも収録。
「黒鍬者」「見廻組のこと」は、『歴史と視点』にも収録されている。
(※『手掘り日本史』収録「トシさんが歩いている」は、本書に掲載されていない。)

これらエッセイを読むと、創作の源泉に様々な見聞や思索があったとわかって、小説の味わいもいっそう豊かに感じられる。

本書の巻末には、書誌一覧と人名索引が掲載されている。読者にとって便利であり、また司馬の遺産が末永く活用されていくためにも役立つと思う。

司馬遼太郎
歴史のなかの邂逅〈4〉
勝海舟~新選組
(中公文庫)
>>詳細を見る



司馬遼太郎
歴史のなかの邂逅〈2〉
徳川家康~新選組
>>詳細を見る



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