こういう括りで本を紹介されるのも、いいですね。
平助は「魁先生」の代名詞があるように、ワタクシのイメージでは野球の一番打者
という感じでしょうか。少々ケンカっ早くて気が強い、打てば一発長打もある・・・
かつて巨人に在籍していた仁志選手みたいなイメージ。ワタクシが描くときはそんな
姿を思い描いています。
しかし、試衛館に出入りするようになった経緯や、その試衛館メンバーの中から
唯一(スパイ斎藤は除いて)高台寺党へ参加した心境など、かなりわからない
部分がありますね。
小説などで平助を扱うときは、そんなところが作家の創作意欲を沸き立たせるので
しょうね。
平助生存説は一瞬「オオッ」と興味をそそられますが、左之助馬賊説よりも信憑性
は低いでしょうねぇ。左之助馬賊も眉ツバっていや眉ツバですが、なんか夢があって
好きな話です。
平助は水道の利権で儲けるよりも、同じ伝説なら藤堂公の御落胤の方が夢があります。
御落胤じゃなくても「関係者くらいの間柄」でも、いいです。
薄桜鬼ってワタクシ、全く存じ上げなくて。
なんか今、新選組ファン(特に女子)の基本ラインのようですね。
元々ゲームなのですか・・・しかしそのジャンルが歴史シュミレーションなどでは
なく、「恋愛アドベンチャー」ってのがスゴイですね。
藤堂平助の本
そこで、「藤堂平助」を主題とする関連書や作品等を、以下にまとめておく。
【ノンフィクション】
市居浩一 『高台寺党の人びと』所収「藤堂平助」 人びと文庫/1977
伊東甲子太郎ら御陵衛士を主題とする研究書。平助については、壬生・南部家の伝承が特に興味深い。
体裁は、文庫本ではなく、四六判ハードカバーの単行本。
詳細は『高台寺党の人びと』を参照のこと。
市居浩一 『新選組・高台寺党』所収「藤堂平助」 新人物往来社/2004
『高台寺党の人びと』の加筆・修正版。前書の南部家伝承は、残念ながら削除されている。
詳細は『高台寺党の人びと』に併記している。
山村竜也 『新選組剣客伝』所収「先駆の剣 藤堂平助」 PHP研究所/1998 PHP文庫/2002
試衛館派8人の評伝集。文庫版は単行本の加筆・修正版。詳細ながら、わかりやすくまとまっている。
新人物往来社編 『新選組銘々伝』第1巻所収「藤堂平助」 新人物往来社/2003
複数の執筆者による新選組隊士の評伝集、全4巻。第1巻は16人の隊士を取り上げる。
「藤堂平助」は菊地明が担当。やはり、詳細ながらもよくまとまっている。
菊地明・伊東成郎・結喜しはや 『土方歳三と新選組10人の組長』所収「八番組長 藤堂平助」
新人物文庫/2012
幹部隊士たちの伝記と10大事件史。書名からはわかりにくいが、局長・総長・参謀も網羅されている。
「八番組長 藤堂平助」は結喜しはやが担当。コンパクトにまとまっている。
緋鳳 『藤堂平助とは何者か 落胤と呼ばれた男』 中央公論事業出版(制作・発売)/2014
藤堂平助生存説など異説を採り入れつつ、御落胤説や剣流剣歴について検証する論考。
2010年に『新選組八番組長藤堂平助とは何者か?』という書名で私家版(?)が出版されていた模様。
他の隊士と込みでなく、平助ひとりをメインにした珍しい研究書。
ちなみに、藤堂平助生存説は、研究家・谷春雄が「油小路の藤堂平助」と題し、『歴史と旅』1980年11月号(秋田書店刊)に発表した。
曰く、平助は油小路の包囲網を脱出し、名前を変え、明治期には横浜方面に住んでいた。肩から背中にかけて、長い刀傷が残っていた。川村三郎(=元新選組隊士・近藤芳助)と協力し、水道工事に絡む利権で大儲けした。大正11~12年頃に死没。息子がいたものの、遺産を道楽で使い果たし音信不通になった、とか。
ただし、関係者子孫の談話のみで、史料の裏付けが得られず、執筆者自身もこの説には懐疑的であった。
【小説】
南原幹雄 『新選組情婦伝』所収「血染め友禅 藤堂平助の女」
立風書房/1977 角川文庫/1989 徳間文庫/1996 学研M文庫/2003 祥伝社文庫『江戸おんな八景』/2011
短編小説。友禅職人おあいが、幼馴染みで恋人だった平助と再会するものの、残酷な運命に引き裂かれる。
詳しくは『新選組情婦伝』を参照。
早乙女貢『新選組銘々伝』所収「御落胤罷り通る」
徳間書店/1985 徳間文庫/1987 増補版『新選組列伝』新人物往来社刊/2003
短編小説。幼少期の平助は座頭の夫婦に育てられたという、オリジナル設定がユニーク。
詳細は『新選組銘々伝』を参照。
風巻絃一 『ぐでん流剣士 新選組藤堂平助』 春陽文庫/1990
長編小説。平助が、近藤や土方を見限って御陵衛士に加盟したのは至極当然、というストーリー。
異母兄弟の藤堂数馬、医師の娘・寿美枝、くノ一・夏といったオリジナルキャラとの関係は興味深い。
詳細は『ぐでん流剣士』を参照。
火坂雅志 『新選組魔道剣』所収「祇園の女」
光文社/1996 光文社文庫/1999 文春文庫/2009 集英社文庫『誠の旗がゆく』/2003
短編小説。芸妓・君香との出会いが平助の運命を大きく変える、オカルティックなストーリー。
詳しくは『新選組魔道剣』を参照。
秋山香乃 『新選組藤堂平助』 文芸社/2003 文春文庫/2007
長編小説。平助の生涯を、土方歳三との関係に重きを置いて描き出す。
文芸社より2000年、「藤原青武」名義で出版された『SAMURAI 裏切者』の改訂版。
詳しくは『新選組藤堂平助』を参照。
秋山香乃 『新選組出陣』収録「誠の旗の下で ―― 藤堂平助」 廣済堂出版/2014 徳間文庫/2015
短編小説。伊東派の分離脱退に加わる平助と、新選組に残る永倉新八とが交わした、哀しき誓い。
詳しくは歴史時代作家クラブ編『新選組出陣』を参照。
【マンガ】
藤堂平助が主人公のマンガ作品(商業出版物)というものを、寡聞にして知らない。
メインキャラクターのひとりとして比較的重要な扱いをされている作品は、こんなところだろうか。
『薄桜鬼 ~新選組奇譚~』 2008-
元はアイディアファクトリー(オトメイト)発売の、女子向け恋愛アドベンチャーゲーム。
アニメ(テレビ・OVA・劇場版)、書籍、CD、演劇、ミュージカル作品などが展開している。
書籍は、原画イラスト集・小説・コミックと、これまた多彩。平助をフィーチャーしたものもある。
この作品の平助は、小柄なので、美青年というより美少年という印象。
直情径行な性格で、よく年上の仲間にからかわれたりしている。
ヒロイン千鶴に対して優しい気遣いを見せるあたり、ポイントが高い。
『新選組刃義抄 アサギ』 原作:山村竜也 作画:蜷川ヤエコ 構成協力:町田一八
スクウェア・エニックス ヤングガンガンコミック全8巻/2009-2012
沖田総司・藤堂平助・斎藤一の同世代トリオが主人公。
作中の平助は、剣士として沖田に及ばない己に焦りを感じ、それが実戦にも出てしまう危うさがある。
以前のまとめ記事、永倉新八の本、斎藤一の本はそこそこ重宝していただいている様子。
しばらくまとめを上げていなかったので、久々に書いてみた。
ここに挙げたもの以外にお気づきの書籍・作品があれば、コメント欄へなりとお知らせいただければ幸い。
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COMMENT FORM
ご感想ありがとうございます。
まさにおっしゃるようなイメージが、平助にはありますね。
それに加えて、女性関係のことで近藤勇に叱られたという逸話からは、ちょっと不良っぽい江戸っ子(軟派なシティボーイ)の側面もありそうに感じます。
生存説は、谷先生も仰せのとおり、疑問点が多いです。
たとえ試衛館派の面々が平助を逃がそうとしても、顔を知っている隊士は大勢いるわけで、死体をすり替えたりなど困難でしょう。それに、川村三郎も、史談会で証言した元御陵衛士の仲間も、平助の生存について一言も触れていません。
ただ、平助の母親は多摩に縁があったらしい、という話は気になります。
御落胤説も、所持刀や諱における関連の可能性が、興味深く思えます。
乙女ゲームの素材として、新選組は最適でしょう。
個性的なイケメンが大勢登場するし(イケメン説のない人物でもキャラデザは自由だし)、スリル満点のイベントを発生させやすいし、オリジナル設定も盛りやすいし。
新選組ファンにハマったきっかけを問うと、かつては『燃えよ剣』『新選組血風録』がダントツでしたが、今日日は『薄桜鬼』が多そうですね。
面白く読みました!ずっと土方歳三や沖田総司のファンで藤堂平助は、なんか伊東について新選組を抜けた人くらいの存在でしたけど
PEACEMAKER鐡という最近初めて漫画を読んで藤堂平助がすごく気になるようになり先日御陵衛士の墓参にも行きました。
薄桜鬼は絵が綺麗だなと思いますが乙女ゲをしないのでよくは知りませんが藤堂平助に関してまたいろいろ研究が進めばいいなと思います
お楽しみいただけましたようで、何よりです。
正直に言うと、当方も『薄桜鬼』はテレビアニメを多少見た程度で、あまり詳しくありません。
ただ、この平助はいい奴だなあと感じたのは確かです。
研究分野でその後、藤堂平助に関する新事実が出たとは聞いていません。
でも、いつか関連史料が発見され、研究が進んで実像に迫ることができればいいですね。