新選組の本を読む ~誠の栞~

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 広瀬仁紀『土方歳三散華』 

長編小説。近藤勇を盛り立て新選組を統制するため、自身の人間性を殺し「鬼副長」に徹する土方歳三の苦闘を描く。

試衛館以来の同志にすら敬遠されようとも、情を捨て隊法を厳格に適用し、敢えて憎まれ役を演じる歳三は、心中を誰にも漏らさない。
しかし、その苦渋を察する弟分の沖田総司は、変わらぬ親しさで接する。
ある時、歳三は、姉によく似た恵林禅尼と知りあい、彼女との語らいにつかのまの安らぎを見出す。
やがて戊辰戦争が勃発。
京都を遠く離れても禅尼の思い出を胸に秘め、あくまで新選組副長として戦う歳三は、近藤勇との節義に準じるべく死地に赴く。


職務のため厳しくふるまう土方歳三だが、一方では何かにつけ総司を案じ、山崎烝の手柄が褒賞されるよう計らい、柴司の自裁に涙するなど、本質は思いやり深い。
同志を裏切った隊士に容赦ないのも、人情にあついからこそだろう。

会津で、斎藤一に「処断された者達の名誉のためにも、生き残って事実を後世に伝えて欲しい」と頼む場面が、印象深い。

最期の場面を結ぶ「幕末の悲痛さを、一身に具現したかのように、この男は争闘し、闘死して生涯を終えた」との一文が、本作のすべてを象徴している。

新人物往来社の単行本(1978)、富士見書房の文庫本(1982)、小学館文庫(2001)が出版された。

土方歳三散華
(小学館文庫)




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この小説は大好きで何度も読みました。
実は「熱い土方」の描き方が好きですね。特に、お姉さんに似た尼さんとの交流、柴司の切腹にまつわる話は感動しました。

2011/11/11(Fri) |URL|なおまゆ [edit]

Re: なおまゆさん

なおまゆさん
広瀬仁紀の新選組ものは、熱く、しかも清々しいですね。
今後、ほかの広瀬作品もいくつか紹介したいと思っています。
どうぞお楽しみに。

2011/11/11(Fri) |URL|東屋梢風 [edit]

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