新選組の本を読む ~誠の栞~

小説 史談 エッセイ マンガ 研究書など

 早乙女貢『沖田総司』 

長編小説。天賦の剣才と純粋な心を持つ沖田総司の、短くも鮮やかな生涯を描く。

多摩から江戸へ帰る途中、少女おりえを無法な人買いの魔手から救出した沖田総司は、追っ手と渡り合い、難なく撃退した。
その様子を目撃し、総司の手腕を見込んだ斎藤熊三郎らは、試衛館(作中では誠衛館)一門を浪士隊に勧誘する。

上京後、一門を中心とする浪士隊残留者によって、新選組が結成された。
寄せ集め集団ながら、剛毅で朴訥な近藤勇、冷徹で非常な土方歳三、明朗で素直な沖田総司という3人の個性によって、バランス巧みに運営されていく。
特に総司は、組織管理には直接関わらないものの、信義に厚く、誠実で純粋なその人柄が、隊士達の精神的支柱となる。

機転の利く彼は、上京途次に本庄宿の大焚火事件を解決し、八・一八の政変では酒売りに変装して敵陣を探りにいくなど、剣以外でも大胆な働きを見せる。

しかし、池田屋事件を境に発病し活躍が減っていくと、新選組もまた衰亡に向かうのだった。
最後まで武士らしく戦って散ることを切望しつつ、総司は持てる力のすべてを尽くす。


本作の沖田総司は、くよくよ考え込んだり悩んだりしない。
思い立ったら即実行、そのため時には思わぬ失敗もするが、努力によって挽回する。
何事にも一所懸命、若者らしく爽やかなのが良い。

また、斎藤一の人物造形が面白い。
御家人くずれの小粋な江戸っ子で、べらんめえ口調、女に手が早い。
清河八郎から盗った刀を近藤・土方に売るという、とんでもないことまでやってのける。
この一と総司とが、親しく交わす会話も楽しい。

総司をめぐる女として、町医者の娘お奈美、過激浪士に関わる人妻たまき、成長したおりえが登場。
彼女らと総司との交流は、それぞれ清らかで心温まる情景だが、いずれも哀しい結末を迎える。

このほか、山南敬助の死、総司の病などは痛ましい場面だが、全体的にはあまり深刻にならず読める。
なお、早乙女作品では土方歳三が嫌な奴に描かれがちだが、本作は「嫌度」が低め。

初出は、1974年4月26日~1975年3月20日の河北新報・新潟日報・愛媛新聞などにおける連載。
講談社から単行本(1976)、ロマンブックス(1978)、文庫本(1979)が出版されている。
いずれも上・下巻の2冊構成。

沖田総司 上
(講談社文庫)



沖田総司 下
(講談社文庫)




長編小説の関連記事

COMMENT FORM

  • URL:
  • comment:
  • password:

Trackback

トラックバックURL:https://bookrest.blog.fc2.com/tb.php/32-045ea818


back to TOP