新選組の本を読む ~誠の栞~

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 新宮正春『勝敗一瞬記』 

短編小説集。実在の剣豪・剣客が勝負に賭ける姿を、創作を交えて描き出す7編。
このうち、新選組に関わるのは「近藤勇の首」「坂本龍馬の眉間」「沖田総司の貌(かお)」の3編。

「近藤勇の首」
芹沢派の生き残り・平間重助は、近藤勇が流山で投降したことを知った。
芹沢鴨を暗殺された復讐がかなわなければ、せめてその最期を見届けようと板橋宿へ向かう。
ところが、刑場で処刑されたのは替え玉だった。
日光街道を北へ向かう近藤と、事態に気づき後を追った平間との、因縁の対決が展開する。

芹沢暗殺の現場から逃走した平間重助の消息は長らく知れなかったが、どうやら明治期に存命していたらしい。
また、処刑された近藤の首級は、京都の三条河原で晒された後、行方が確認されていない。
本作は、これらに独自の設定を交えて展開する。伝奇、推理ものふうでもあり、面白い。

「坂本龍馬の眉間」
今井信郎ら見廻組の組士が、近江屋にて坂本龍馬・中岡慎太郎を暗殺する一部始終。
事件は伊東甲子太郎の陰謀、と設定されている。

「沖田総司の貌」
非凡な剣才を持つ沖田総司の生涯を描く。
原田左之助と親しい彼は、宝蔵院流槍術の技に着想を得て必殺の三段突きを編み出し、新選組で活躍を重ねる。
しかし、土方歳三によって山南敬助が罪無く処断されて以来、快活さを失う。
原田の妻の妹・お絹との淡い恋が、唯一心の慰めだった。
やがて労咳に冒された彼は、自分の肖像写真をお絹に托し、京を去る。
その後、江戸で原田に再会したお絹は、沖田の病死を聞かされるのだった。

衰弱していく沖田を哀れみ、土方がある方法を用いて云々という仮説は、創作にしても穿ちすぎに思えた。
そもそも、そういう意図があったとしたら、他にもっと適切な手段があるのではなかろうか。
沖田より先に、上野の彰義隊戦争で戦傷死したとされる原田が、沖田の死を報告しているのも疑問。
(※本作は、原田の生存説を採っていない。)
ただ、死ぬ直前の沖田が黒猫を斬ろうとしたことを、「南泉斬猫」の故事(理屈や常識にとらわれず咄嗟の瞬発力で窮地を脱することを説いた禅の公案)と関連づけた設定は、面白い。

このほかの収録作品は、「塚原卜伝の耳」「伊藤一刀斎の爪」「荒木又右衛門の指」「武蔵羅切」の4編。

1990年、集英社より文庫オリジナル版として出版された。
ちなみに、初出は下記のとおり。
「近藤勇の首」 『週刊小説』1989年8月4日号
「坂本龍馬の眉間」 『週刊小説』1990年3月30日号
「沖田総司の貌」 『小説City』1990年8月号

「近藤勇の首」は、『血闘! 新選組』(池波正太郎ほか/実業之日本社文庫/2016)にも収録されている。

勝敗一瞬記
(集英社文庫)
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