新選組の本を読む ~誠の栞~

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 村松友視『風を追う 土方歳三への旅』 

歴史紀行。日野に始まり、江戸、京都、伏見、流山、会津、宮古、函館と、土方歳三の軌跡を辿る。

かつて土方歳三が踏んだ土地に立ち、吹く風に往時の気配を感じ取り、様々な思い入れを交えつつ、謎に満ちたその人間像を探っていく。
時には脱線し、時には他の作家の著述を引用しながら、作者自身が楽しんで書いている。
型にはまらないスタイルが、異色エッセイといった風情でもある。
結果的に、歳三が何を考えて行動したかという作者の疑問は解けないまま終わるが、旅という過程そのものに価値があったと言えよう。

史料は必要最小限の参考にするだけで、あとは独自の勘を働かせ、歴史の裏側や人物の内面に迫ろうとする村松流が楽しい。
時代の変遷や人物のまとう雰囲気を「風」になぞらえる手法が、旅の情緒をよく表現している。
同じように軌跡を辿って旅をしたことがある、あるいはこれからしようと思っている向きには、共感するところが多いであろう。
ただ、「近藤勇とのホモ・セクシュアルにも近い友情」というくだりには、苦笑を禁じ得なかった。

作者あとがきによると、もともとPHP研究所の月刊誌『Voice』の連載企画だった。
PHPが新選組関連書を出すようになったのは1995年頃からで、それ以前は扱わなかった。
つまり当時、本作は同社で唯一の新選組ものだったのだ。
その意味でも異色作と言えるかも知れない。

PHPから単行本(1985)、次いで文庫本(書名『土方歳三への旅』/1988)が出た。
朝日文芸文庫版(1994)では、カバーデザインと巻末解説が異なり、本文の写真が省略された。
略年表や地図にも若干の違いはあるが、それ以外の内容は同じ。

(※村松友視の「視」は本来「示」+「見」だが、環境依存文字のため「視」で代用した。)

風を追う
土方歳三への旅
(朝日文芸文庫)




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