新選組の本を読む ~誠の栞~

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 福田定良『新選組の哲学』 

エッセイ集。下記の14編を収録。短編小説ふうでもある。

「えらい人・芹沢鴨と山岡鉄太郎」
本庄宿の大焚火事件にて、沖田総司の「芹沢さんはやはりえらい人だなあ」という感慨。
それを聞き咎めた土方歳三と山南敬助との会話。
芹沢に勝手放題な言動を改めさせた山岡の、秀逸な説得術。

「ここは試衛館ではない」
「稽古は人を斬るためにするのか」「刀の価値は斬れること以外にもあるのでは」という沖田の疑問。
それにつきあわされる永倉新八や斎藤一との、まったく噛み合わない会話。

「土方のタトエばなし」
伊東甲子太郎の人物評をめぐって、近藤と土方の意見に齟齬が生じる。
「浮気」について、土方が沖田にした例え話。それを斎藤に受け売りした沖田の失敗。

「女と新選組」
芹沢とお梅の関係に対する、隊士たちの感情問題。
新選組隊士と女郎の共通点とは何か。地位や職業を超えた、素の男女関係を語る斎藤。
田内知の切腹をめぐる、男女の機微について。
男の世界に立ち入らず分を弁えた女と、男とすべてを共有する女との差違を、近藤が思い巡らす。

「教えたがり屋武田観柳斎」
能力を発揮する機会を得た者の幸福と、それを失った者の不幸。
武田は、人に教える面白さを知って、意欲を発揮しすぎたために周囲から疎まれてしまう。
もしも現代に生まれていたら、有能な教師になったのではないか、という話。

「原田左之助のエロ話」
モテ自慢を得意げに語っていた原田が、生真面目な吉村貫一郎を前にして窮する一幕。
真面目すぎて融通の効かない人間が、他人の言葉をすべて真に受けてしまったために起きる悲喜劇。

「おれには見えない」
土佐の後藤象二郎と面談した近藤が、自分はあれほどの「人物」ではないと言い出す。
土方は、「人物」とは、先見の明がある者のことではなく、先の見えない人々を導く者だと反論する。

「みかどはパーパス」
尊王論を語る篠原泰之進と、それを聞かされた沖田、永倉、斎藤の反応。
「ミカドとは何か、何故尊ばれるのか」という質問に答えるため、篠原は西洋事情に詳しい学者の説を受け売りするものの、おかしな外来語が入り交じり、ますますわかりにくくなる。

「斎藤一の訓話」
講話の日、臨時の講師役を任された斎藤が、隊士たちに精神訓話を聴かせる。
その要領を得ない内容に対して、土方が心の中でいちいちツッコミを入れるものの、最後には深く納得することになる。

「沖田マニアの夢」
沖田の性格や才能は、大手の道場ではなく試衛館というこぢんまりした道場で、周囲に見守られつつ学んだからこそ育まれたのではないか、という考察。

「我ら脱走に成功せり」
尾中清三郎と熊太郎の父子は、新選組での生活に恐れをなし、脱走を企てる。
もともと能力は低かったものの、ことさらにダメ隊士を演じ、逃げ出す機会を窺っていた。
ある日、彼らの脱走工作に気づいた沖田は…。

「土方歳三の癖」
考え事をしている最中に、人はどのようなしぐさをするのか。
土方の癖を知ってしまった沖田と、沖田の打ち明け話を聞く斎藤との、おかしなやりとり。
函館まで脱出を勧めに来た斎藤と、信念を貫こうとする土方との、最後の会話。

「幽霊を斬る」
新入隊士の中山圭三郎は、切腹の介錯役を務めて以来「幽霊を見た」と取り乱すようになる。
それに対して、気の迷いに過ぎないと一蹴する土方と、幽霊でも斬ってしまえと勧める斎藤。

「山南と沖田の死にかた」
脱走した山南が、追ってきた沖田に対して、問われるままに脱走の理由を語る。
その時にはよく理解できなかった言葉の意味を、療養中の孤独のうちに悟った沖田の悲哀。

テレビドラマ「新選組血風録」(NET系1965-1966放映)を通じて知りあった友人が、新選組について夢想し語った談話を、作者が文章にまとめたもの――という形式をとっている。
(ただし、この設定自体も作者の創作であるらしい。)
新選組隊士の面々が、明るくユーモラスに描かれる。

書名から堅苦しい内容を連想しがちだが、とても読みやすい。
隊士達の他愛ない雑談が愉快。彼らは実際にこういう会話をしていたのでは、と思えるリアリティがある。

「新選組も廓(くるわ)も同じようなもの」
「オレが締めているのは下帯で、褌ではない」
「幽霊より土方さんのほうがこわいのは当たり前」


など数々の名言(?)に抱腹絶倒した後、ふと考えさせられるところが「哲学」である。
作者の新選組に寄せる愛情が、温かく伝わってくる。

新人物往来社の単行本(1974)、中公文庫(初版1986/改版2006)が刊行された。

「沖田マニアの夢」は、『沖田総司・青春の愛と死』(新人物往来社編発行/2001)にも収録されている。

新選組の哲学
(中公文庫)
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