新選組の本を読む ~誠の栞~

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 吉川英治『貝殻一平』 

長編小説。倒幕の志士・沢井転(さわいうたた)と、貝殻座の芸人・一平の数奇な運命、彼らをめぐる人々の錯綜した人間模様を描く。

中山忠能の娘・扇子は、大奥女中として江戸城に潜入。
ある時、幕府の機密文書を奪って京都へ逃亡するが、目付役同心らに追跡される。
父を死に追いやられて以来、幕府に反感を抱いていた沢井転は、扇子を助けて逃がす。
そのため、幕吏や新撰組に追われることとなる。

一方、山崎蒸の叔父の家に仲間奉公していた一平は、主人の娘と駆け落ちする。
山崎に咎められて、旅芸人の一座に逃げ込み、女座長お千代に匿われることに。

この一平と転がうりふたつであったことから、事態は思いがけぬ騒動に発展していく。
折から勃発した天誅組の乱。
一平とお千代は、戦火を逃れようとして巻き込まれ、天誅組の主将・中山忠光と行動を共にする。
兄・忠光に密書を届けようとした扇子は、幕府軍に捕われる。
転は、新撰組に追われながらも巧みに裏をかき、天誅組に加勢し、扇子の救出を図る。


新撰組の面々が多数登場。主人公の敵であっても悪者扱いはされず、脇役なりになかなかの活躍を見せている。
特に目立つのは、山崎蒸、松原忠司、原田左之助。
そのほかに谷三十郎、酒井兵庫、近藤勇、沖田総司、永倉新八、山南敬助なども出てくる。

本作の山崎蒸は、酒乱で短気だが、職務には熱心。それなのに、転に度々してやられるという気の毒な役回り。
近藤勇は、洞察力に優れ、些事にこだわらず、隊士らに慕われる立派な隊長として描かれている。
ただどういうわけか、土方歳三は名前が出てくるのみで、一言の台詞もない。

総体的に、展開がスリリングで楽しめる娯楽作品である。

初出は、1929年7月10日~1930年3月17日、大阪朝日新聞における連載。
早川書房の単行本(1948)、六興出版の単行本(1973)、講談社の吉川英治文庫(1977)・吉川英治全集(1983)・大衆文学館(1995)、学陽書房の吉川英治幕末維新小説名作選集上・下巻(2000)など、多数出版されている。
電子書籍も出ている。

貝殻一平〈上巻〉
(吉川英治
幕末維新小説名作選集)



貝殻一平〈下巻〉
(吉川英治
幕末維新小説名作選集)




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