新選組の本を読む ~誠の栞~

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 戸部新十郎『総司はひとり』 

長編小説。しばしば起こる胸騒ぎに突き動かされるように剣を振るい、敢えて人斬りの生き方を選びとった沖田総司の生涯を描く。

多摩への出稽古の途中、沖田総司は偶然、仇討ちの現場に遭遇する。
黙って見ているつもりが、討手側の助太刀らしき一人を斬ってしまった。
これがきっかけで、仇持ちの浪人・神保仙左衛門、その娘みきと知りあう。
また、真の討手は、総司に似た青年・里見織部と、その姉ふさであるとわかった。
ところが、姉弟はなぜか仙左衛門を討ちたくなさそうに見受けられるのだった。


ストーリーは試衛館時代から山南敬助の死までが中心となっており、それ以降の出来事は千駄ヶ谷で療養中の回想として出てくる。
全編にわたり、上記の4人と総司が複雑な関わりを持つ。
神保の娘みきとは、互いに好意を抱くが、恋とも言えない淡い関係のまま別れる。

本作の沖田総司はけっこう短気で、機嫌を損ねると意地の悪いこともずけずけ言うが、一方でどこか悟ったような空漠たる風情を漂わせる。

また、近藤勇や土方歳三らの知らぬところで、単独行動することも多い。
特に歳三は、発熱した時に冷やし手拭いを当ててやったり、治療のため名医を探したりと優しさを見せるのに、総司のほうではさほど頼る気持ちがない。
他の多くの作家が描く、人懐こい総司とはかなりイメージが違うが、これはこれで面白味がある。

本作の題名は、最後の場面を結ぶ言葉に由来しており、その結びが印象深い。
作品全体が寂寞とした雰囲気に満ちており、読後に何か取り残されたような感じが残るものの、それが不思議と快くも思えた。

青樹社からの単行本(1972/1982)では、『血風・新選組』という副題が付いていた様子。
その後、双葉文庫(1984)、徳間文庫(1990)、中公文庫(2002)などが出版された。
電子書籍も出ている。

作者が沖田総司を描いた作品としては他に、短編連作集『総司残英抄』があり、これも名作である。

総司はひとり
(中公文庫)




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