新選組の本を読む ~誠の栞~

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 南條範夫『十五代将軍 沖田総司外伝』 

長編小説。最後の将軍・徳川慶喜、新選組随一の遣い手・沖田総司と、ふたりをめぐる人々を描く幕末群像劇。

英明をうたわれ、25歳の若さで将軍後見職に就いた慶喜。
十四代将軍・家茂を補佐し、因循姑息な幕閣、様々な外交要求を突きつける列強、攘夷断行を強要する朝廷、倒幕を企てる薩長などを相手に苦闘を続ける。

一方、浪士隊残留者によって結成された新選組は、規律を乱す芹沢派を粛清し、池田屋事件によって一挙にその名を高めた。
しかしその名声の陰で、沖田総司は労咳を病み、人斬りの毎日に虚しさを感じていた。
そんな時、慶喜の愛妾おみのと出会い、心惹かれる。おみのもまた、沖田に想いを寄せる。
おみのは、慶喜の身辺を探るため、薩摩の密偵として働かされている身だった。
沖田との愛に生きようと決意し、慶喜の元を辞したものの、自由は得られず、大久保一蔵の命令で江戸へ帰されてしまう。

家茂の死後、慶喜は十五代将軍に就任する。
彼の必死の努力にもかかわらず、幕藩体制は行き詰まり、ついに大政奉還を余儀なくされる。
新選組も鳥羽伏見の戦いに敗れ、甲州勝沼戦でも敗退。隊長・近藤勇を失い、崩壊していく。

江戸の千駄ヶ谷に療養する沖田は、おみのとようやく再会し、彼女に看取られて短い生涯を終える。
維新後、慶喜は生涯公に出ることなく、大正2年に77歳で世を去るまで穏やかな晩年を過ごした。


徳川慶喜と沖田総司とを並行して描いた、珍しい小説。
ふたりが直接関わることはなく、おみのの存在が唯一の接点となっている。
このほか、おみのの従姉妹で伊東甲子太郎の恋人でもあるおあき、慶喜に仕える渋沢篤太夫(栄一)と渋沢成一郞、山岡鉄太郎など、多彩な人々が登場する。

新選組の面々については、沖田が好青年として描かれる以外、良い扱いをされていない。
名声を得た近藤勇は傲慢になり、自分は酒色にふけりながら、隊士には苛酷な引き締めを行う。
土方歳三は、おあきを密偵と見なして拉致し、訊問と称して変質的にいたぶる。
新選組に対する作者の否定的な見解が、反映されている様子。

なお作中、渋沢成一郞が沖田によく似ているために人違いされる、という場面が何度か描かれる。
これは何か根拠があっての設定なのか、単なる創作なのか、少々気になった。

河出書房新社(1971)、青樹社(1974)、旺文社文庫の上・下巻(1987)、徳間文庫の上・下巻(1989)、文春文庫(改題『十五代将軍徳川慶喜』)の上・下巻(1998)が出版されている。

十五代将軍
沖田総司外伝〈上〉
(徳間文庫)






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2012/07/31(Tue) || [edit]

コメント御礼

上のコメントをくださった方、どうもありがとうございます。
拙いブログですが、今後ともよろしくお願い申し上げます。

2012/08/01(Wed) |URL|東屋梢風 [edit]

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