新選組の本を読む ~誠の栞~

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 羽山信樹『幕末刺客列伝』 

短編小説集。幕末の剣客や志士10人を主役とする10編の連作。
このうち、新選組に関わるのは「半次郎の腕」「総司の眸(め)」「歳三の瞼」の3編である。

「半次郎の腕」
城山に立てこもる薩軍の陣中で、桐野利秋が「人斬り半次郎」と呼ばれた闘争の日々を回想する。
彼の腕に忘れられぬ傷痕を残したのは、新選組の沖田総司であった。
互いに死力を尽くして戦い、互いに正々堂々決着をつけたいと願った間柄であったが、その願いが最早この世で叶わぬことはわかっていた。

桐野と沖田との間に、立場を超えた友情が芽生えている、という設定。
江戸で療養中の沖田が黒猫を斬れないまま亡くなったことを、桐野が自分に結びつけるという着想が面白い。

「総司の眸(め)」
沖田総司が兄とも慕う山南敬助と、姉とも慕う山南の内妻お光。
童児のような心を持ち、男女の機微を理解できない沖田は、ふたりの間に立って愛憎に戸惑い、苦悩する。
良かれと思って取った行動は悉く裏目に出て、ふたりを絶望と死へ追い込んでいく。

子供のように無邪気な沖田像は他の作家にも多く描かれるが、本作ではちょっと幼すぎるようにも思えた。
あまりにも純粋で一途な心の抱える孤独が、寂しく切ない。

「歳三の瞼」
流山における近藤勇土方歳三の決別を描く。
話し合いでは結論が出ず、竹刀勝負によって向後を決めようと激しく撃ちあうが、勝負の判定は微妙だった。
互いの放った技を振り返りながら、土方は近藤の意志を尊重しようと決意する。

この時、近藤と土方がどのような合意を得て(あるいは得ずに)別れたのか諸説あり、フィクションでは作家の腕の振るいどころでもある。本作の、試合で決着をつけようとする展開はユニーク。
最後、忠実な隊士・今田権助の目から見た、土方の美貌と哀しみが印象に残る。

このほか収録作は、「以蔵の指」「新兵衛の肚(はら)」「信吾の歯」「惟三郎のふぐり」「次左衛門の掌(て)」「彦斎のつむじ」「博文の貌(かお)」の7編。
初出誌は、『野生時代』1984年6月号・11月号~1985年7月号。

角川書店より単行本(1985)、文庫本(1987)が出版されている。

「総司の眸(め)」は、アンソロジー『誠の旗がゆく』にも収録されている。

幕末刺客列伝
(角川文庫)
>>詳細を見る



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おはようございます。
羽山信樹氏の作品は、織田信長関係しか読んだことがなく、恥ずかしながら、新撰組についての著書は知りませんでした。好きな作家なので、古書で探してみますね。紹介、有難うございます。

2011/11/23(Wed) |URL|なおまゆ [edit]

Re: なおまゆさん

なおまゆさん
コメントありがとうございます。
本書は、実在の人物と身体の部位とを組み合わせた短編連作、という仕立てが面白いです。1作ずつ独立した作品ながら、それぞれに描かれる幕末維新の諸相が1冊に総合され、一時代の全体像が見えるように感じられました。
私は、羽山作品は本書しか読んだことがありません(汗)。戦国期では『是非に及ばず』、江戸後期では絶筆・未完となった『江戸の川風』、幕末では『火輪疾走せり』なども面白そうに思えます。

2011/11/23(Wed) |URL|東屋梢風 [edit]

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