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 土方愛『子孫が語る土方歳三』 

史談と史料集。土方歳三生家の子孫であり、土方歳三資料館の副館長である著者が、代々伝わる口伝や遺品、文書などについて書いている。

土方歳三に直系の子孫はいない。土方家の当主は、実兄の喜六であった。
喜六の子孫によって継承された当家の屋敷に、現在は資料館が併設され、歳三の遺品など数々の展示品が公開されている。
この資料館を訪れると、いろいろと興味深い解説を聞くことができる。
ただ、開館日や開館時間は限られており、なされる解説の量にも自ずと限度がある。
本書は、来館者に解説される話のみならず、普段は披露されない話までも加え、土方家や歳三に関する様々な事柄が書かれた、非常にありがたい1冊である。

本書の全35項目の名称は、下記のとおり。
土方家のはじまり/歳三の生家/土方家を訪れた蜀山人/過去帳と十人の兄妹たち/
平家での二度の葬儀手伝い/歳三の幼少時代/歳三の手習い/二度の奉公/石田散薬/
牛額草刈り取りの指揮/庭に植えた矢竹/菩提寺 高幡山金剛寺/甥っ子作助と歳三/
歳三と天然理心流/俳句の話/鉢金と送り状/鎖帷子/京土産/歳三の書状二通/
女は下の下なり/和泉守兼定/甲州勝沼戦争のとき――郷里との別れ/
近藤勇の晒し首瓦版の写しにこめられた思い/近藤勇の罪状宣告文と思しきもの/
一隊の長として/歳三の戦死(北海之凶音)/歳三 辞世の句/歳三の写真/歳三の肖像画/
処分された遺品と改ざんされた中極意目録/榎本武揚の書/小柴長之助――死を目前に/
殉節両雄の碑/荒井郁之助が送ってくれた碧血碑の写真/歳三の埋葬地

このほか、土方家の略系図と、歳三の年表も掲載されている。

著者の筆に過度の感情移入や気負いはなく、なるべく客観的に伝えようとする姿勢がうかがえる。
文章は平易で、固有名詞や古風な語には読み仮名がふられており、大変読みやすい。

写真も多く挿入されている。資料館の常設展示品だけでなく、通常は見ることのない人物や建物の古写真、古文書類の画像まであり、非常に興味深い。

そのほか、幕末期の屋敷見取り図や「安富才輔書状」「加藤福太郎書簡」の全文が掲載されているのも、読み手にとっては嬉しい配慮である。

まえがきにもあるとおり、本書は研究本、史実への学術的な考察本ではない。
しかし、歳三の実像を知る手がかりとして、欠かせない貴重書であることは間違いないだろう。
「歴史上の偉人」でも「映画や小説やマンガのヒーロー」でもない、家族の一員、身近な存在として語り継がれてきた素顔がここにある。

2005年、新人物往来社より、四六判ハードカバーの単行本として刊行された。
中経出版からオンデマンド・ペーパーバック版も出ている。

[追記 2013/06/25]
著者はその後、土方歳三資料館の「館長」に就任されている。

子孫が語る土方歳三
>>詳細を見る


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