新選組の本を読む ~誠の栞~

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 池波正太郎「色」 

短編小説。新選組の興亡を背景に、土方歳三と経師屋の未亡人お房との、出会いと別れを描く。

隊務の忙しさから逃れるように、一人歩きに出た歳三。
攘夷派浪士に襲われ、斬り合いとなる。
その時、歳三と浪士との間に飛び込んできたのがお房だった。
それなりの女性遍歴を重ねてきたはずの彼の心に、彼女は忘れがたい印象を残す。
思いがけず再会を果たした後、恋愛も結婚も抜きにした、大人の関係が始まる。
互いの間に日常を持ち込まぬ約束を交わし、ふたりは日頃の憂さを忘れるために逢瀬を楽しんだ。
しかし時代の激流は、この関係にも否応なく終幕をもたらす。
最後に、「新選組の鬼副長」が余人には見せない苦悩・悲哀を吐露した時、お房は約束違いを責める。


土方歳三とお房との交流が、しみじみとした情感に満ちている。
愉しみと割り切りつつも、いつしか本気で愛しあっていたからこそ、男は慰めを求め、女はそれ以上の展開になることを怖れた。

初出は、昭和36年(1961)、文藝春秋『オール讀物』8月号への掲載。
本作を収録している主な書籍は、下記のとおり。

『池波正太郎作品集8 近藤勇白書他』 朝日新聞社 1976
『池波正太郎短編小説全集6 秘伝』 立風書房 1978
『代表作時代小説 第8巻』 日本文芸家協会編 東京文芸社 1978/再1984
『錯乱・賊将』 東京文芸社 1979/再1985
『刃傷 剣客小説集』 立風書房 1992
『完本池波正太郎大成 第24巻 (時代小説短編 1)』 講談社 2000
『時代劇原作選集 あの名画を生みだした傑作小説』 細谷正充編 双葉文庫 2003
『炎の武士』 角川文庫 初版1979/改版2007
『上意討ち』 新潮文庫 初版1981/改版2002
『血闘! 新選組』 実業之日本社文庫 2016

エッセイ集『戦国と幕末』に、本作執筆の裏話「土方歳三」が掲載されている。
文中に、作者の祖父の同業知人・山口宗次郎という名前が出てくるが、この人の父親が「色」に登場する従僕・平吉のモデルであろう。

余談ながら、本作は昭和36年(1961)、東映により映画化された。
タイトルは「維新の篝火」、脚本は結束信二、監督は松田定次、主演は片岡千恵蔵と淡島千景。
平成16年にDVDソフトが発売されている。

炎の武士
(角川文庫)



維新の篝火
[DVD]




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