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 山科けいすけ『サカモト』 

ギャグマンガ。坂本龍馬をはじめ、幕末の有名人たちがシュールな笑いを醸し出す4コマ連作集。

架空の人物を主人公とする現代もの『C級さらりーまん講座』『パパはなんだかわからない』で知られる作者だが、歴史パロディものも手がけており、『SENGOKU』に続いて本作を執筆・連載した。

ひとつの話が4コマもしくは8コマで完結する形式。ストーリーはほとんどない、と言ってよい。
おかしな性格・性癖のキャラクター同士がかみあわないやりとりをする、というのが作者のギャグスタイルのひとつであり、本作も幕末人物たちがそのようなキャラとなって、混沌とした幕末ワールドを展開する。
主な登場キャラは、下記のとおり。

坂本龍馬
天衣無縫の自由人。物事にこだわらなさすぎる性格。
日本の夜明けについて皆に語り聴かせるが、自分自身のビジョンもイマイチ明確でない。
つきあう相手は顔の面白さで選ぶ。勝海舟の世界観に深く傾倒している。

西郷隆盛
上野の銅像を二頭身にしたような外見。何事にも動じない大物。すべてにおいて薩摩が一番と確信している。
薩摩の力で幕府を倒して日本を統一し、全国をイモ畑に、標準語を薩摩弁にするのが理想。
坂本と仲が良い。キン◯マ自慢。

勝海舟
なぜかあばた面で小太りのおじさん。日本人は広い世界に目を向けるべきと説き、独特の持論を展開。
曰く、月の裏側には異星人の基地がある。世界一の強大国は「あとらんちす」。
欧米列強が日本を狙うのは、日本(青森県)にキリストの墓があるから。
新撰組の設立目的は、世界の歴史を陰で操ってきた秘密結社「ふりいめえそん」の日本侵入を防ぐこと、と看破している。
しかし、坂本以外の者にはなかなか理解されない。

高杉晋作
肖像写真をデフォルメした容姿。頭が良く、プライドが高い。些細なことでキレる。
革命家の血が燃えたぎり、やたらと放火する、とても迷惑な「炎の革命家」。
同じ労咳病みの立場から、沖田総司にライバル心を燃やすが、喀血量では適わない。
桂小五郎といがみ合っている。

桂小五郎
美男だが、二頭身。お尋ね者として追われながら諜報活動を続け、いつ襲われるかびくびくしている小心者。
追跡をかわすため変装するうちにマニアとなり、猫・カンガルー・立ち木・海亀(産卵中)など次第に「欽ちゃんの仮装大賞」化していく。高杉晋作とは犬猿の仲。

沖田総司
労咳なのに血色が良く、まるまる太った大食漢。
攘夷派である証拠をつかんで斬るため坂本に近づき、友達づきあいするようになる。
しょっちゅう大量喀血し、血を吹き付けて敵を倒すなどの離れ業を見せる。
お肌が女よりもキレイで、やたら人から触られまくる。痩せれば美形。

土方歳三
イケメンで女にモテモテだが、恨まれることも相当やっているらしい。
戸外では倒幕浪士だけでなく、女たちからも襲撃される。
本人はバイセクシャルで、沖田の胸をもんでは迷惑がられている。

近藤勇
その筋のコワイ人みたいな面相。やたらめったら人を斬る。
自分は刺されても気づかないほど、痛覚が鈍感。
土方に片想いしているが相手にされず、沖田に嫉妬している。

このほか、怜悧な理論派だがイモ大好きの大久保利通、武器のついでに怪しい「幸運の壺」を売りつけるグラバー、凄腕の人斬りなのに見かけはあどけない幼児ふうの岡田以蔵、マニアックな人斬りを趣味とする斎藤一なども登場する。

これでもかとギャグが繰り出されるが、個人的に最も印象に残っているのは以下の会話。
坂本「ところで口の中に何を入れちょるぜよ?」
高杉「何も入れとらんっ」(怒)


これでも単なる悪ふざけではなく、一応は幕末史の基礎知識を踏まえて茶化している。
時々、面白さを通り越して、なんだか虚脱感に襲われる迷作。
シュールすぎて、こんなふうに文章で説明するのが馬鹿らしくなってくる。

竹書房より全2巻の単行本(1999)が出ている。新潮文庫版(2010)もある。

サカモト
(新潮文庫)
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