新選組の本を読む ~誠の栞~

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 童門冬二『新撰組 物語と史蹟をたずねて』 

長編小説&史跡紹介。多摩に始まり箱館に終わる、新撰組の興亡を描いた小説を主体とする。
各章の末尾に、「史跡探訪」と題する関連史跡の紹介、「スポット」と題する補足解説が配されている。

平易な文章と単純明快な筋立てで、史跡の写真も掲載し、わかりやすく親切な内容である。
京都時代の出来事が中心となっており、時代背景としての政情や倒幕派の動静にも触れている。
どちらかと言えば、あまり凝った創作性を求めていない読者に適しているだろう。

こういう本に細かくツッコミを入れるのは無粋だが、どうしても気になる点がいくつかある。
  • 京都残留組が会津藩預かりとなった時点で、すぐに「新撰組(新選組)」の隊名を下されている。
  • 八月十八日の政変の際、御所警衛に出動したことが省略されている。実際、正式に隊名を下されたのは、この出来事が契機であったのだが。
  • 西本願寺への屯所移転は、「スポット」でごく簡単に触れただけ。それほど小さい出来事だろうか。
  • 慶応2年1月23日、伏見・寺田屋の坂本竜馬遭難事件において、新撰組も捕縛のために出動したと書かれている。しかし、この説は誤りで、実際に出動したのは伏見奉行の配下。竜馬を護衛する三吉慎蔵が「肥後守よりの上意につき慎みおれ」という捕り方の声を聞き、「肥後守=松平容保」だから配下の新撰組が襲った、と思ったらしい。当時の伏見奉行・林忠交も、たまたま受領名が「肥後守」だったので、そのために生じた誤解とされる。
当方の手元にあるのは文庫本の初版。改訂版でこれらの点がどうなったか、生憎と未確認である。

本作の近藤勇は、素朴で太っ腹なだけでなく、大局を見据えることに長けた人物。
土方歳三は、冷徹な策士らしく振る舞う場面もあるが、短気ですぐに感情を表す印象のほうが強い。
近藤・土方が強い信頼関係で結ばれている描写には、心が熱くなる。
一方、新撰組に夢を求めて挫折した山南敬助の心情が、哀しい。
全体として、時代の変転を知りながら「誠」の道を貫き通した新撰組の姿が、愛惜込めて描かれている。

作者は、この「物語と史蹟をたずねて」シリーズでは、他に『沖田総司』『土方歳三』を著している。

1976年、成美堂出版より単行本が出版された。
その後、単行本に加筆訂正した成美文庫版(初版1994/改訂2003)が出ている。

新撰組
物語と史蹟をたずねて
(成美文庫)
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