新選組の本を読む ~誠の栞~

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 津本陽『幕末剣客伝』 

長編小説。元新選組隊士・中島登の後半生を描く。

明治5年、東海道の浜松宿。
旅籠町を通りかかった中島登は、悪質なごろつきを退治した。
そこで偶然にも、会津戦争のおり助けた大島清慎と再会する。
大島の勧めで浜松に住みつくこととなり、未だ衰えぬ剣技をもって近隣の治安を守り、次郎長の元子分・小政一家の無法を懲らしめる。
その一方、17才年下のおよねと再婚。
戊辰戦争を共に戦った戦友らの絵姿を描き、同じく元新選組隊士の島田魁と旧交を温める。

そんな時、新政府高官となった元御陵衛士・阿部十郎が、旧怨から元新選組隊士たちを付け狙っていることがわかった。
すでに安富才助が、阿部によって謀殺されたという。
さらに、中島に向けて刺客が送り込まれてくる。
中島は、朋友の仇を討つため東京へ上り、直新影流師範・榊原鍵吉や元額兵隊・西村賢八郎らの助力を得て、反撃に出る。


タイトルから新選組が京都で活躍した頃の話を連想するが、これは「幕末」を生き延びた「剣客」が明治を生きていく物語である。

津本陽は、『虎狼は空に』『剣のいのち』など、京都新選組を題材にすると、かなり殺伐とした話を書く。
ただ本作は、時代背景が違うためか、すさんだ雰囲気がない。
剣を使う場面でも無闇に人が殺されることはなく、中島登の活躍が実に爽快。

新しい時代の中、挫折感を抱えながらも自分なりの生き方を模索していく元旧幕派の人々の姿が、よく描き出されている。
中島登にしても、時代に上手く乗り切れず、商売を始めてみたものの失敗したりする。
それでもなお、めげずに淡々と、時には熱く、信念を貫く。
本作を読んで彼のファンになる人も多いのではなかろうか。

回想の中で、京都・会津・箱館における数々のエピソードや、そこに登場する新選組隊士たちの人物像も、鮮やかに活写されている。
たとえば「フランス陸軍士官の制服を着て、長髪を肩に垂らした土方歳三の青ざめた横顔」というくだりに、情景がありありと見える気がした。

初出は、『自警』(警視庁の機関誌)1988年10月号から1990年10月号にかけての連載。
講談社の単行本(1991)と文庫本(1994)、双葉文庫(2009)が出版されている。

幕末剣客伝
(双葉文庫)
>>詳細を見る



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幕末剣客伝

以前、佐藤彦五郎忌の記念講演で、中島登のご子孫の方が紹介されていました。
図書館で単行本を借りて読みました。
小説というより評伝のような感じでした。

2018/05/31(Thu) |URL|やぶひび [edit]

やぶひびさんへ

ご子孫の中島大成氏は、その翌年の沖田総司忌のご講演でも、関連書の1冊として本作を挙げておいででしたよ。

評伝のように感じさせる箇所もいくらかありますが、本作はやはり小説です。
フィクションがかなり多く含まれていますので。特に安富才助の件など、実際にありえないでしょう。
ただ、虚構とわかって読んでもなお感動できる名作だと思います。

2018/06/01(Fri) |URL|東屋梢風 [edit]

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