新選組の本を読む ~誠の栞~

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 三好徹『さらば新選組』 

短編集。幕末維新期に活躍し、波瀾のうちに生涯を終えた人物たちを描く6編。
小説・評伝・エッセイと様々な形式を交え、かなり自由な書き方がなされている。

収録作品のうち、新選組に関わるのは表題作「さらば新選組 土方歳三」
その性格や考え方を、主に近藤勇との対比によって解き明かそうとする内容。

導入部は、木戸孝允と福地桜痴との会話から始まる。
池田屋事件などそれぞれの体験から、近藤勇や土方歳三の人物像にアプローチしていく。

作者が最大の謎とするのは、流山における近藤・土方の別離。
しっかりと結ばれていたはずの絆が、なぜここで突然に断ち切られたのか、推理を試みている。

組織の運営手法、封建的身分制度に対する意識、近代的装備の考え方、人材登用や戦争に臨む姿勢など、新選組の歴史を振り返りつつ、土方歳三の内面を近藤勇のそれと比較する。
つまり、近藤が既成の価値観を重んじたのに対し、土方は新しいものを取り入れる適応力や合理性に富んでいた。
そして、鳥羽伏見戦争の敗退後「すでに刀槍の時代ではない」と述懐した土方は、場合によっては、いずれ近藤との別離もやむを得ないと決心した。
それは言い換えれば、剣に拠って立ってきた(すでに時代遅れとなった)新選組との「決別の辞」である。
この「決別の辞」が、作品タイトルの由来であろう。

こうした作者の考察は、本作より約3年後の長編小説『戦士の賦 土方歳三の生と死』にも反映された。

ちなみに、沖田総司贔屓の作者は、彼を登場させることも忘れていない。
土方とも近藤とも異なる沖田の意識と、それを見守る土方の視線が、巧みに表現されている。

結びの一節では、土方歳三の最後の出撃が小説タッチで描かれる。
作中、島田魁が付き従ったことになっている。
実際には、彼は弁天台場に立て籠もって戦っており、五稜郭からの出撃に同行していない。
作者の凡ミスかも知れないが、この役回りが島田にぴったりくる感じはわかる気がする。

その他の収録作品5編は、下記のとおり。

「悲運の志士 中岡慎太郎」
「流星の人 高杉晋作」
「八郎、倒れたり 清河八郎」
「最後の武者 桐野利秋」
「大廈の一木 小栗上野介」


光文社の単行本(1985)、光文社時代小説文庫(1989)が出版されている。電子書籍も販売されている模様。

「さらば新選組 土方歳三」は、下記のアンソロジーにも収録されている。
『時代小説大全集〈4〉』 新潮文庫 1990
『誠の旗がゆく』 集英社文庫 2003

さらば新選組
(光文社時代小説文庫)
>>詳細を見る



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