新選組の本を読む ~誠の栞~

小説 史談 エッセイ マンガ 研究書など

 早乙女貢『志士の女たち』 

短編小説集。幕末維新を駆け抜けた志士と、彼らに関わった女たちの生き方を描く7編。
そのうち、新選組に関わるのは、第四話「蚊帳の中」

「蚊帳の中」
芹沢鴨暗殺事件に巻き込まれたお梅と、妹お照の物語。

菱屋仁平の妻お梅は、内気な貞女。その妹のお照は、遊び好きの奔放な娘。
ふたりは姉妹でありながら、正反対の性格だった。
ある日、大和屋焼き討ちの現場で、人波にもまれ転倒したお梅は、覆面をした襲撃犯の首領に助けられた。
この時から、彼女の心には不可解な変化が起こる。
その後、些細な落ち度から、夫・仁平が新選組に連行される。お梅は屯所を訪ね、釈放を希った。
しかし、引き替えに身代金の形として軟禁された上、芹沢に体を奪われてしまう。
以来、お梅は自ら情欲に溺れ、帰宅を拒んで留まり続けた。
お照は、そんな姉を連れ戻そうと、夜半密かに抜け出す手引きを申し出る。
一方、近藤勇ら試衛館派は、芹沢派排除の計画を着々と進めていた。

貞淑で純真な人妻お梅が、芹沢との関係によって変貌していく過程を主軸に、新選組内部の軋轢を描いている。
芹沢との対比で、近藤勇は誠実で慎重、潔癖な人柄と設定されている。

独自の人物として、お照を出したのは面白い。
ただ、沖田総司が彼女を斬ってしまうというのは、姉妹が同時に殺されるというシチュエーションを作るための、強引な展開に思えた。
そもそも、沖田大好きの作者が彼にこのような役回りを負わせること自体、かなり意外である。
長編小説『沖田総司』より数年前に発表された作品なので、この頃はまだ大好きになっていなかったのだろうか?
本作が、新選組ファンの間であまり話題にならないのも、沖田の行動があまりにもイメージにそぐわないためかもしれない。
もっとも、沖田に思い入れを持たない向きは、それなりに楽しめるだろう。

その他の収録作は、下記のとおり。
「志士の恋」 福岡藩の若き下士が、藩執政に命じられた五卿暗殺に失敗し、愛する女も失う。
「洋妾坂由来」 東禅寺警備の松本藩士が、恋のため逆上し、破滅に至る経緯。
「江戸の攘夷党」 芝神明前の芸者おうめと、高杉晋作との出会い。
「竜馬の女」 坂本竜馬を深く愛しながら、男性遍歴を重ねるお竜の孤独と悲哀。
「彰義隊異聞」 上野戦争の前夜、旗本がひょんなことから助けた娘は、仇敵の恋人だった。
「筑紫おとめ」 久留米を脱藩した幼なじみへの恋心から、運命に翻弄され続ける女の半生。

桃源社ポピュラ・ブックス(1973)、春陽文庫(1979)が、出版されている。

志士の女たち



短編小説の関連記事

COMMENT FORM

  • URL:
  • comment:
  • password:

Trackback

トラックバックURL:https://bookrest.blog.fc2.com/tb.php/96-7fb826d2


back to TOP