新選組の本を読む ~誠の栞~

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 南原幹雄『新選組情婦伝』 

短編小説集。新選組の男達の陰で、愛に燃え散っていった女達を描く連作6編。

「血汐首 芹沢鴨の女」
芹沢鴨との愛欲に身を滅ぼしたお梅の業。

江戸の筆屋に上女中として奉公していたお梅。
戸ヶ崎道場に届け物に行ったおり、師範代・下村継次に体を無理やり奪われてしまう。
以来、度々呼び出されるが、そうした生活に倦んだ彼女は、奉公先を去った。
そして、郷里の母に無心された金を用立てるため、品川の遊郭へ身を売る。
やがて、太物問屋・菱屋平兵衛に見初められ、請われて妾となり、京都へ移り住んだ。
ここで、図らずも下村こと芹沢鴨に再会。さらに、幼なじみの常吉が、彼女を取り戻すべくやってくる。
お梅は悩んだ末、常吉とともに江戸へ去ろうと決めた。
その前夜、最後の機会と思い、屯所に芹沢を訪ねていく。

女としての立場の弱さに翻弄され続ける、お梅の境遇が哀れ。
母と同じような人生を送りたくないと密かに願いながら、結局は同じような道を辿っていく様がやりきれない。

「女間者おつな 山南敬助の女」
山南敬助のため、自ら進んで密偵となった女の悲惨な最期。

江戸で山南と知りあったおつなは、彼が浪士組に加わって京へ上った翌年、後を追って念願の再会を果たす。
その頃、新選組の内部では、山南と土方歳三との対立が深刻化していた。
おつなは、山南の立場を守るため手柄を立てさせようと、倒幕派が集まる旅宿に女中として住み込む。
そして、桂小五郎の動静を探るべく、その部下に身を任せたものの、密偵であると見破られ、捕えられてしまう。

山南の女性関係というと明里を想起するが、本作にも彼女は登場し、おつなと話す場面がある。
新選組の内情が倒幕派に筒抜け。もし実際にそういう状態だったら、山南の死に関する真相も何らかの記録が残り、現代に伝わっているだろうと思えた。

「血染め友禅 藤堂平助の女」
染物職人おあいが、藤堂平助との残酷な別れに直面する。

おあいは、藤堂平助と幼なじみであり、長じて恋人同士となった。
しかし、江戸前友禅の家業を継ぐため、他の男と結婚し、それが破綻してからは京都へ修業に来ていた。
ここで、久々に藤堂と再会するも、彼が同志と新選組を脱隊したと聞いて、その身を案じる。
そんな時、土方歳三が密かにおあいを訪ね、ある依頼を持ちかけた。

江戸前友禅を京や加賀に負けないものにしたい、と願って修業するおあいのひたむきさが良い。
土方の約束は嘘だったのかどうかわからないが、わざわざ謝罪しているところを見ると、最初から守る気がなかったわけでもなさそうに思える。

「壬生心中 松原忠司の女」
生まれついての凶運に苦しむおいねが、夫を殺した松原忠司との行き場のない愛の果てに命を絶つ。

おいねは、紀州の藩籍を剥奪された安西慧と、江戸から京都へ移り住む。
原因は、彼女を巡る争いから安西が相手の男を斬ってしまったことだった。
ところが、その安西もまた、急死する。
そして、安西を連れ帰り、おいねを気遣う松原忠司も、切腹により命を落としかける。
かつて、自分と深く関わった者は破滅する、と言った易者の言葉どおりになろうとしているのを、おいねは感じ取っていた。

子母澤寛『新選組物語』所収の「壬生心中」を、作者なりにアレンジした内容。
おいねは、別に生まれつき不運だったわけでなく、占いに頼りすぎるのが良くなかったのでは、とも感じた。

「おいてけぼり、お京 原田左之助の女」
原田左之助を愛しながら置き去りにされ、それでもなお諦め切れない女の凄惨な末路。

江戸の松山藩邸へ行儀見習いに上がったお京は、そこで中間奉公していた原田と出会い、忍び逢う仲となる。
しかし、原田は京都へ去り、彼女は紆余曲折を経て、金貸し利兵衛の妾になっていた。
鳥羽伏見戦で敗退した新選組が江戸に帰還し、再会を果たしたふたりだが、それを知った利兵衛は激怒。
報復を恐れたお京は、原田の後を追って会津へ向かおうとする。

原田左之助が靖共隊を途中で抜けて江戸へ戻った理由は、お京の身を案じたためと設定されている。
彼女に対する誠意のなさを、ここで払拭しようとしたものか。

「総司が惚れた女 沖田総司の女」 
茶屋を切り盛りする未亡人おえいは、体調を崩した青年武士を助ける。

青年は沖田総司と名乗り、以後訪ねてくるように。やがて、ふたりは恋仲となる。
しかし、おえいの父は、倒幕派浪士と深く関わっていた。
沖田はやむなく、彼女の父を斬る。父を殺されたおえいは、沖田との関係を清算しようと決意する。

沖田のほうも、おえいとの関係に何らかの形でけりをつけるつもりだったようだが、何を望んだのかわからないまま、気を持たせる終わり方をしている。

どの話も、性描写が露骨。
しかも、「血染め友禅」を除く全話で、女主人公が性的な屈辱あるいは虐待を受ける場面があって、その上に不幸な最期を遂げてしまう。
娯楽小説と割り切って気にしなければよいのだろうが、なんとなく後味が悪い。

土方歳三がおつな、おあいに恨まれている以外は、新選組の面々が好意的に扱われている。
悪者扱いでないところには救われた。

立風書房(1977)、角川文庫(1989)、徳間文庫(1996)、学研M文庫(2003)が出版された。

収録作の、他の書籍への所収は下記のとおり。

「血汐首 芹沢鴨の女」
『新選組傑作コレクション 烈士の巻』 河出書房新社 1990
『情炎 時代小説の女たち』 縄田一男編 角川書店 1992
『新選組烈士伝』 縄田一男編 角川文庫 2003

「血染め友禅 藤堂平助の女」
『江戸おんな八景』 祥伝社文庫 2011

「女間者おつな 山南敬助の女」
『血闘! 新選組』 実業之日本社文庫 2016

新選組情婦伝
(学研M文庫)
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